
地位のために全てを犠牲にした物語と娘のためにすべてを尽くしてきた物語の終わり。そして、半永久的に続くであろう二人を結ぶ物語の始まり。
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オカルトで始まり、オカルトで終わる。だけど、そこにオカルトはない。空想で仮想で妄想の類。そこに全ての責任を押し付ける。あくまで、人が引き起こした戦争ではなく、オカルトによって起こされた戦争。帰結は本の中。悔しさや哀しさや怒りは全て本にぶつけるしかない。そんな人間の成長を留めてしまう歴史の背景。

真実は神のみぞ知る。そこにヴィクトリカが入るのかも知れないけれど、真実を知ることだけを糧に生きるよりも愛する人と一緒に生きることが。知ることよりも愛することを選んだ彼女の道。それは多くの犠牲をもとに作られた小さな幸せ。
だけど、その小さな幸せを感じられることが何よりも嬉しくて、悲しい過去も残酷な背景も全て取り払ってくれるくらいに久城一弥が優しく彼女を包み込む。
今回だと、モンストール・シャルマンの話を適用するのは二つあると思うんです。一つは、モンストールがコルデリアで、うさぎがブライアン・ロスコー。そして、もう一つは、モンストールがヴィクトリカで、うさぎが久城一弥。バッドエンドとグッドエンド。そんな違いはあれど、誰かが誰かを呪って、誰かが誰かを思った、不幸と幸せの境目。

娘の代わりになったコルデリアは守られていた側から守る側へと変わる。それは娘を想う気持ちと、その父を憎む気持ち。
その二つの思いは時が経てども変わらず、時期を待って、娘の解放とその父への復讐を願った。その時に、自分はどうなっているかわからない。死んでも生きても、きっと娘の幸せを願う日々には変わらないのだから……。
それが正しいのかどうかはわからない。既に国中がおかしくなっており、正しさも間違いも全て、権威と地位の名のもとに覆される世の中になってしまったのだから。だから、すがるものなんてない。ただ、悔しさを噛み締めて日々を生きるよりも、最期は自分の望んだ結末を用意して終わりたかった。そんな母親の愛のカタチ。

そして、モンストール・シャルマンである、コルデリアが死ねば、うさぎである、ロスコーは死んだも同然。守るものがなくなり、役目を終えたのだから。愛する人の復讐に加担したロスコー。愛する人を傷つけた生きた証であるヴィクトリカを憎むロスコー。それも、また愛のカタチ。
だけど、それは報われる道と知ってのこと。復讐が何も生み出さず、ただの刃に刃を返すだけの繰り返し。いつになっても戦争を重ねる人類の愚かさ。それを象徴しているのはわかっているけれど、どうしようもない現実に立ち向かっていった彼らはきっと幸せの中で死んでいったのだろう。愛しい人を想って……。

そして、それに対抗するように守られたヴィクトリカはモンストール・シャルマンの道を歩んでいたのだけれど、方向転換させられた。それは物語の一部ではなく、一人の生きた少女として、これからを切り開いていく、希望のある未来を夢見た彼女の新しい物語の始まり。
それはロスコーに殺されようとしていた彼女が憐れみをかけられて、その恩返しのために守った物語の一部でもあった。恩に恩を返して、また、一から何かを築きあげていこうとした彼女なりの希望だった。だけど、それはあっさりと途絶えてしまった。母を愛した、母を救ったロスコーの死ほど、彼女にとっての絶望に他ならない。

母のために生きてきた彼女としては、今までの他人の殺人事件や、自分も巻き込まれた殺人事件とは全く別物の将来に対する怯え。恐怖。不安。絶望。きっと、それら全てが彼女を覆い、髪の色素を薄くしてしまうくらいに、落胆を感じた。
久城一弥もいない。母親もいない。ロスコーも亡くなってしまった。これから、何を生きがいにして生きればいいのか、残された道がなくなった。

そんな銀髪へと変容した彼女の救いとしての久城一弥。モンストール・シャルマンは生きていたのだから、うさきである君が死ぬ必要はないだろう。物語は既に終わりを遂げて、違う物語へと変わっているはずだ。
だけど、その物語はどうなるかわからない。そんな不安を抱えながら、戦地から帰ってくる彼を待った。絶望を抱えながら待った。誰も頼る人がいない異国の地で一人っきり。

そして、帰還した久城一弥との再会のシーンは涙モノだった。この世の中の不条理の中で、お互いの愛を確信しながら、もしかしたら、生きて会えないかも知れない。
そんな不安の中での再会による感動と言い尽くせない喜び。心だけでなく、手もつなぐことができる。温もりを実感できる。それが生きている証であって、これからも生きていこうと思える証。

そんな生と死の残酷さを見せつつも、久城一弥とヴィクトリカの物語はまだ終わりを告げない。OPのラストのように、いつまでも手をつないで、永遠に歩んでいける。
そんな勇気と希望を残した物語。最高に心温まる演出で感涙ものでした。ありきたりな言葉になってしまうけれども、お二人とも、お幸せにね……。
オカルトで始まり、オカルトで終わる。だけど、そこにオカルトはない。空想で仮想で妄想の類。そこに全ての責任を押し付ける。あくまで、人が引き起こした戦争ではなく、オカルトによって起こされた戦争。帰結は本の中。悔しさや哀しさや怒りは全て本にぶつけるしかない。そんな人間の成長を留めてしまう歴史の背景。
真実よりも素晴らしいと感じられるモノ

真実は神のみぞ知る。そこにヴィクトリカが入るのかも知れないけれど、真実を知ることだけを糧に生きるよりも愛する人と一緒に生きることが。知ることよりも愛することを選んだ彼女の道。それは多くの犠牲をもとに作られた小さな幸せ。
だけど、その小さな幸せを感じられることが何よりも嬉しくて、悲しい過去も残酷な背景も全て取り払ってくれるくらいに久城一弥が優しく彼女を包み込む。
今回だと、モンストール・シャルマンの話を適用するのは二つあると思うんです。一つは、モンストールがコルデリアで、うさぎがブライアン・ロスコー。そして、もう一つは、モンストールがヴィクトリカで、うさぎが久城一弥。バッドエンドとグッドエンド。そんな違いはあれど、誰かが誰かを呪って、誰かが誰かを思った、不幸と幸せの境目。
モンストール・シャルマンの物語のバッドエンド

娘の代わりになったコルデリアは守られていた側から守る側へと変わる。それは娘を想う気持ちと、その父を憎む気持ち。
その二つの思いは時が経てども変わらず、時期を待って、娘の解放とその父への復讐を願った。その時に、自分はどうなっているかわからない。死んでも生きても、きっと娘の幸せを願う日々には変わらないのだから……。
それが正しいのかどうかはわからない。既に国中がおかしくなっており、正しさも間違いも全て、権威と地位の名のもとに覆される世の中になってしまったのだから。だから、すがるものなんてない。ただ、悔しさを噛み締めて日々を生きるよりも、最期は自分の望んだ結末を用意して終わりたかった。そんな母親の愛のカタチ。

そして、モンストール・シャルマンである、コルデリアが死ねば、うさぎである、ロスコーは死んだも同然。守るものがなくなり、役目を終えたのだから。愛する人の復讐に加担したロスコー。愛する人を傷つけた生きた証であるヴィクトリカを憎むロスコー。それも、また愛のカタチ。
だけど、それは報われる道と知ってのこと。復讐が何も生み出さず、ただの刃に刃を返すだけの繰り返し。いつになっても戦争を重ねる人類の愚かさ。それを象徴しているのはわかっているけれど、どうしようもない現実に立ち向かっていった彼らはきっと幸せの中で死んでいったのだろう。愛しい人を想って……。
もう一つのモンストール・シャルマンから飛び出た物語

そして、それに対抗するように守られたヴィクトリカはモンストール・シャルマンの道を歩んでいたのだけれど、方向転換させられた。それは物語の一部ではなく、一人の生きた少女として、これからを切り開いていく、希望のある未来を夢見た彼女の新しい物語の始まり。
それはロスコーに殺されようとしていた彼女が憐れみをかけられて、その恩返しのために守った物語の一部でもあった。恩に恩を返して、また、一から何かを築きあげていこうとした彼女なりの希望だった。だけど、それはあっさりと途絶えてしまった。母を愛した、母を救ったロスコーの死ほど、彼女にとっての絶望に他ならない。

母のために生きてきた彼女としては、今までの他人の殺人事件や、自分も巻き込まれた殺人事件とは全く別物の将来に対する怯え。恐怖。不安。絶望。きっと、それら全てが彼女を覆い、髪の色素を薄くしてしまうくらいに、落胆を感じた。
久城一弥もいない。母親もいない。ロスコーも亡くなってしまった。これから、何を生きがいにして生きればいいのか、残された道がなくなった。

そんな銀髪へと変容した彼女の救いとしての久城一弥。モンストール・シャルマンは生きていたのだから、うさきである君が死ぬ必要はないだろう。物語は既に終わりを遂げて、違う物語へと変わっているはずだ。
だけど、その物語はどうなるかわからない。そんな不安を抱えながら、戦地から帰ってくる彼を待った。絶望を抱えながら待った。誰も頼る人がいない異国の地で一人っきり。

そして、帰還した久城一弥との再会のシーンは涙モノだった。この世の中の不条理の中で、お互いの愛を確信しながら、もしかしたら、生きて会えないかも知れない。
そんな不安の中での再会による感動と言い尽くせない喜び。心だけでなく、手もつなぐことができる。温もりを実感できる。それが生きている証であって、これからも生きていこうと思える証。

そんな生と死の残酷さを見せつつも、久城一弥とヴィクトリカの物語はまだ終わりを告げない。OPのラストのように、いつまでも手をつないで、永遠に歩んでいける。
そんな勇気と希望を残した物語。最高に心温まる演出で感涙ものでした。ありきたりな言葉になってしまうけれども、お二人とも、お幸せにね……。
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