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第8話のラストで太一が頼れる人はこの文研部だけでなく、友達や家族、ただのクラスメートや知り合いでさえも何もかも文研部だけですべてを背負い込まないで頼ろうという姿勢があったのですが、今回はそれとは逆にこの風船葛たちの起こしたことは隠せるだけ隠そうという姿勢は一瞬矛盾しているように見えます。
ですが、この2番目は太一に誰にも話さないようにという命令だったので、それを文研部に話したことによって文研部全員に罰を与えた。そんな強硬手段を使ってくる2番目の性格を見るに友達や家族に話してしまうと、それは文研部だけでなく、周囲に危険が及ぶ可能性がある。
だから、その秘密は文研部で共有しないといけない。だけど、伊織の反応を見るに、太一は秘密を隠しながら誰かに頼ることが出来るけれど、伊織は自分自身を見失わせた母親に対しても愛情を感じて、こんなことで困らせたくないという気持ちがあるんでしょうね。これは優しさなのか、信頼の薄さなのか。
家族に対して自分の内面を一生隠しながら生きていくことになるので、絆はいつまでも薄いままになってしまう。伊織と太一が「誰かと一緒なら」という部分で伊織が寂しく思えたのは、離婚再婚を繰り返す母親のもとでどこか擬似家族的な伊織の環境のせいかもしれない。
伊織は母親と一緒にはいるけれど、それは母親に対して合わせた伊織なので、伊織自身が「誰かと一緒」にいるという感覚はなかなか味わえないのかもしれない。
それが二人が思い合っているように見えて、実は大切なことを話せない仲ということがキーでした。どちらも近くにいるのにだいぶ遠くにいる感覚。
だからこそ、今まで文研部に対する思いが他よりも強い伊織の姿があったんだと。そんな自分自身の自信も、周囲への信頼を覚えた太一がその「誰か」になったり、他の「誰か」と太一を通じて今後修復していけたらいいですね。娘の本心を全然わかっていない母親はあまり期待できなさそうなので。
でも、伊織の家庭の事情に首を突っ込むのは結構厳しいものがあるんですよね。PTSDを起こすほどの家庭内暴力を解決する術というのは他人が簡単にどうにか出来る問題じゃない。
離婚するほどの問題を抱えているのは母親か父親かどっちかというのも、その子供もわからないし、周りもわからない。なら、とりあえず、別れさせれば解決するんじゃないかという短絡的思考も、また再婚した時に同じ事を繰り返すかも知れない。
例え、それが良い父親であったとしても、過去のキズは癒えないわけで、そのキズが出来た時には緊張感に満たされた空間であったために痛みを忘れていたことも、家庭での安心感を覚えて冷静になってみた時に痛みを思い出して、キズと痛みを忘れない場合もあったりで、そう簡単に解決しない。
母親も前の父親と似た人を好きになる傾向があるし、父親も母親もどちらも悪いと考えて出ていく子供も多いわけです。
だけど、伊織は昔に戻れたら、今までの反省を生かしてずっと最善策を選び続ければもっと幸せな現実が待っているのかな?と、考えてしまうわけで。
絆が薄いとはいえ唯一の家族の母親が好きだと思っているからこそ、子供の自分がなんとか出来たのかもしれないという後悔で、実際には子供に出来ることなんて限られているんですよね。
夫婦喧嘩の理由に子供が引き金になることもありますが、実質、夫婦の問題は夫婦だけで、子供がそこに入り込む余地も知識も知恵も経験もないわけで、そこで最善策を取ろうと思ってもつまはじきされるのが目に見えているわけです。
そんな辛い過去をもう一度味わって、またダメだったという挫折を経験するのは伊織としてもわかっているわけで、今は感傷に浸りたい。
最善が最悪になるケースもある。そんな誘惑にも似た悲壮感を与える選択。昔に戻りたいか、戻りたくないか。
そこで前回から変わったOPのラストにつながるわけですね。伊織を大切にする準恋人の太一がいて、友情は崩れないよう証明した姫子が手をつなぐ。このシーンが最高でした。
もう、このシーンを写すためにこの作品は用意されたかのような錯覚に陥るぐらいに上手い演出。だって、選択を迫られて困っているけれど、過去に戻りたいとさっきまで言っていた伊織に対して容易に今の伊織のままでいて欲しいなんて、すぐに判断できないですよ。
太一も姫子も伊織の本当の気持ちがわかっていたからこそ、その選択の時の涙も過去に戻りたい発言も、仲間でいると言われた時の嬉し涙も全て含めてわかっているという言葉だけではない本当の愛。
両手に花じゃないけれど、両手をつかむことによって、どこにも行かせない、どこにも行ってほしくない、という今の伊織への懇願にも似た言葉と体で表す太一と姫子と伊織の関係が最高でした。
それを社会的風刺として大きく訴えるわけではないのがこの作品の良い所ですよね。仲間がいれば大丈夫。そんな安心感があります。かといって、憐憫と同情だけで問題が解決するわけではないことを視聴者はわかっているわけで、その仕方の一例を提示してくれたおかげで深く考えなくて済む。
伊織の今後の未来や人生が暗いものではないという希望を見せてくれる。そんなエピソードだったので、伊織好きとしてはたまらない展開でした。やっぱり、伊織の嬉し涙って可愛すぎて卑怯だよね。
終わり方としては今までの二つより良い終わり方だったように思います。ヒトランダム編は風船葛の命の扱い方の気まぐれで終わったし、キズランダム編は姫子の涙とキスで終わったけれど、これからも続いていくという広がりを見せたわけで、それよりもカコランダム編で太一と姫子の信頼を得ている伊織の決心で終わるのがね、TV版最終回にふさわしい最後でした。
しかし、TV版終わっちゃったのが本気で寂しい。というのも、伊織の最後の一言が気になって夜も眠れないです。カコランダム編のロゴのあとの真っ白な背景。あれ、まだ時間があるのに終わった。
テレビが故障したかな、とか感じさせてから、伊織の独白。その風景の白に混じって、何かが動いているわけで、それが桜なのか紙なのかわからない中で雪だとわかったときの演出が憎い。そうか冬休みが終わって、雪の季節だものね。
4人の後ろに伊織だけ離されて段々と情景が明らかになっていく。
それは寒さを感じさせるような雪と、真っ白だった風景が伊織の心の隙間を感じさせて、なんだか切なくなりました。てか、この後の展開がすごく気になる。これぐらい気になったのは、『かしまし』のあのね商法以来です。
でも、最後に片霧烈火の「Salvage」が聞けて満足。これ単体で売ってくれないかなぁ。でも、カコランダム編面白かったから、ブルーレイ買った方がいいか。
しかし、最初はシルバーリンク制作で不安だったけど普通に、いや普通以上に面白く作ってくれて最初から最後まで楽しめました。
総監督が大沼心で監督は初の川面真也で、せっかくのファミ通文庫のヒット作『ココロコネクト』を風船葛みたいに楽しんで何も考えさせないコメディだけで終わってしまいそうなイメージというひどい不安で臨んだけれど、大沼心には『ef』というシリアスを追求した前例があったというのを思い出した。
それに、京アニのKey原作アニメといえばこの人、志茂文彦がシリーズ構成やるのだから問題なかったですね。むしろ、このコンビで色々やってほしい。大沼心の強みとして、これからの作品にも期待です。総監督ってシャフトで言う新房昭之みたいなものだろうか。
あ、でも、まだ『ココロコネクト』続くし、楽しみに待っています。出来れば年内に終わって欲しいですね。スタッフの皆さん、頑張って下さい。いつまでも応援しています。
第8話のラストで太一が頼れる人はこの文研部だけでなく、友達や家族、ただのクラスメートや知り合いでさえも何もかも文研部だけですべてを背負い込まないで頼ろうという姿勢があったのですが、今回はそれとは逆にこの風船葛たちの起こしたことは隠せるだけ隠そうという姿勢は一瞬矛盾しているように見えます。
ですが、この2番目は太一に誰にも話さないようにという命令だったので、それを文研部に話したことによって文研部全員に罰を与えた。そんな強硬手段を使ってくる2番目の性格を見るに友達や家族に話してしまうと、それは文研部だけでなく、周囲に危険が及ぶ可能性がある。
だから、その秘密は文研部で共有しないといけない。だけど、伊織の反応を見るに、太一は秘密を隠しながら誰かに頼ることが出来るけれど、伊織は自分自身を見失わせた母親に対しても愛情を感じて、こんなことで困らせたくないという気持ちがあるんでしょうね。これは優しさなのか、信頼の薄さなのか。
家族に対して自分の内面を一生隠しながら生きていくことになるので、絆はいつまでも薄いままになってしまう。伊織と太一が「誰かと一緒なら」という部分で伊織が寂しく思えたのは、離婚再婚を繰り返す母親のもとでどこか擬似家族的な伊織の環境のせいかもしれない。
伊織は母親と一緒にはいるけれど、それは母親に対して合わせた伊織なので、伊織自身が「誰かと一緒」にいるという感覚はなかなか味わえないのかもしれない。
それが二人が思い合っているように見えて、実は大切なことを話せない仲ということがキーでした。どちらも近くにいるのにだいぶ遠くにいる感覚。
だからこそ、今まで文研部に対する思いが他よりも強い伊織の姿があったんだと。そんな自分自身の自信も、周囲への信頼を覚えた太一がその「誰か」になったり、他の「誰か」と太一を通じて今後修復していけたらいいですね。娘の本心を全然わかっていない母親はあまり期待できなさそうなので。
家庭の事情という子供にとっての大きな問題
でも、伊織の家庭の事情に首を突っ込むのは結構厳しいものがあるんですよね。PTSDを起こすほどの家庭内暴力を解決する術というのは他人が簡単にどうにか出来る問題じゃない。
離婚するほどの問題を抱えているのは母親か父親かどっちかというのも、その子供もわからないし、周りもわからない。なら、とりあえず、別れさせれば解決するんじゃないかという短絡的思考も、また再婚した時に同じ事を繰り返すかも知れない。
例え、それが良い父親であったとしても、過去のキズは癒えないわけで、そのキズが出来た時には緊張感に満たされた空間であったために痛みを忘れていたことも、家庭での安心感を覚えて冷静になってみた時に痛みを思い出して、キズと痛みを忘れない場合もあったりで、そう簡単に解決しない。
母親も前の父親と似た人を好きになる傾向があるし、父親も母親もどちらも悪いと考えて出ていく子供も多いわけです。
だけど、伊織は昔に戻れたら、今までの反省を生かしてずっと最善策を選び続ければもっと幸せな現実が待っているのかな?と、考えてしまうわけで。
絆が薄いとはいえ唯一の家族の母親が好きだと思っているからこそ、子供の自分がなんとか出来たのかもしれないという後悔で、実際には子供に出来ることなんて限られているんですよね。
夫婦喧嘩の理由に子供が引き金になることもありますが、実質、夫婦の問題は夫婦だけで、子供がそこに入り込む余地も知識も知恵も経験もないわけで、そこで最善策を取ろうと思ってもつまはじきされるのが目に見えているわけです。
そんな辛い過去をもう一度味わって、またダメだったという挫折を経験するのは伊織としてもわかっているわけで、今は感傷に浸りたい。
いや、今という現実を変えていく何かを、今持っているわけで、その今あるものが過去に戻って最善を選んだとしても、その今という文研部の仲間の絆は与えられないかもしれない。
最善が最悪になるケースもある。そんな誘惑にも似た悲壮感を与える選択。昔に戻りたいか、戻りたくないか。
そこで前回から変わったOPのラストにつながるわけですね。伊織を大切にする準恋人の太一がいて、友情は崩れないよう証明した姫子が手をつなぐ。このシーンが最高でした。
もう、このシーンを写すためにこの作品は用意されたかのような錯覚に陥るぐらいに上手い演出。だって、選択を迫られて困っているけれど、過去に戻りたいとさっきまで言っていた伊織に対して容易に今の伊織のままでいて欲しいなんて、すぐに判断できないですよ。
太一も姫子も伊織の本当の気持ちがわかっていたからこそ、その選択の時の涙も過去に戻りたい発言も、仲間でいると言われた時の嬉し涙も全て含めてわかっているという言葉だけではない本当の愛。
両手に花じゃないけれど、両手をつかむことによって、どこにも行かせない、どこにも行ってほしくない、という今の伊織への懇願にも似た言葉と体で表す太一と姫子と伊織の関係が最高でした。
それを社会的風刺として大きく訴えるわけではないのがこの作品の良い所ですよね。仲間がいれば大丈夫。そんな安心感があります。かといって、憐憫と同情だけで問題が解決するわけではないことを視聴者はわかっているわけで、その仕方の一例を提示してくれたおかげで深く考えなくて済む。
伊織の今後の未来や人生が暗いものではないという希望を見せてくれる。そんなエピソードだったので、伊織好きとしてはたまらない展開でした。やっぱり、伊織の嬉し涙って可愛すぎて卑怯だよね。
終わり方としては今までの二つより良い終わり方だったように思います。ヒトランダム編は風船葛の命の扱い方の気まぐれで終わったし、キズランダム編は姫子の涙とキスで終わったけれど、これからも続いていくという広がりを見せたわけで、それよりもカコランダム編で太一と姫子の信頼を得ている伊織の決心で終わるのがね、TV版最終回にふさわしい最後でした。
しかし、TV版終わっちゃったのが本気で寂しい。というのも、伊織の最後の一言が気になって夜も眠れないです。カコランダム編のロゴのあとの真っ白な背景。あれ、まだ時間があるのに終わった。
テレビが故障したかな、とか感じさせてから、伊織の独白。その風景の白に混じって、何かが動いているわけで、それが桜なのか紙なのかわからない中で雪だとわかったときの演出が憎い。そうか冬休みが終わって、雪の季節だものね。
4人の後ろに伊織だけ離されて段々と情景が明らかになっていく。
だけど、それとは逆に曇りががかったかのような「私は本当に八重樫太一のことが好きなのだろうか」という伊織の太一に対しての今までの想いを覆すかのような小さくて脆い不安。
それは寒さを感じさせるような雪と、真っ白だった風景が伊織の心の隙間を感じさせて、なんだか切なくなりました。てか、この後の展開がすごく気になる。これぐらい気になったのは、『かしまし』のあのね商法以来です。
でも、最後に片霧烈火の「Salvage」が聞けて満足。これ単体で売ってくれないかなぁ。でも、カコランダム編面白かったから、ブルーレイ買った方がいいか。
しかし、最初はシルバーリンク制作で不安だったけど普通に、いや普通以上に面白く作ってくれて最初から最後まで楽しめました。
総監督が大沼心で監督は初の川面真也で、せっかくのファミ通文庫のヒット作『ココロコネクト』を風船葛みたいに楽しんで何も考えさせないコメディだけで終わってしまいそうなイメージというひどい不安で臨んだけれど、大沼心には『ef』というシリアスを追求した前例があったというのを思い出した。
それに、京アニのKey原作アニメといえばこの人、志茂文彦がシリーズ構成やるのだから問題なかったですね。むしろ、このコンビで色々やってほしい。大沼心の強みとして、これからの作品にも期待です。総監督ってシャフトで言う新房昭之みたいなものだろうか。
あ、でも、まだ『ココロコネクト』続くし、楽しみに待っています。出来れば年内に終わって欲しいですね。スタッフの皆さん、頑張って下さい。いつまでも応援しています。
ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫) 庵田 定夏 白身魚 by G-Tools |