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上条さんの物語……ではなく、一人の野望を抱く少年と、一人の少女と大勢の少女たちとの闘争の物語。


このアクセラレータに突っかかる上条さんのシーンは『超電磁砲』ではなく、『禁書目録』の方で見たかったな。いや、確かに『禁書目録』でも見た記憶はあるんだけど、カメラワークというか演出が絶妙なので、上条さんの格好良さに磨きがかかって主人公補正がかかっている気がしましたw。

「三下」最強


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個人的に上条さんの「三下」という言葉が大好きなんですよね。他にも言い方は色々あったと思うんですよ。まずはミサカ妹から離れるように忠告。それでも聞かないなら、そのままアクセラレータに向かって行っても良かったんですよね。アクセラレータの実験を知ってがむしゃらに向かっていった美琴みたいに。

だけど、上条さんはそれをしなかった。あの時の美琴はゲコ太バッジのミサカ妹が殺されたということに対して感情をむき出しにして襲いかかっていった。それは悔しさや虚しさや復讐心で燃え上がっていたのかもしれない。

ただそれはアクセラレータは正当防衛とみなすことが出来る。美琴が電撃で殺そうとしてきた。それに対し身を守るためについ殺してしまった。ただそれだけ。それで終わることになってしまうんですよね。研究者にとっては残念だけど。

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でも、上条さんは違う。あくまでアクセラレータが悪であるかどうかを確かめた上で動きたかったのでしょう。美琴の言葉や部屋から持ちだしたレポートで裏付けは取れている。けれど、実際にどうかはわからない。レベル5でミサカ妹を殺そうとしている所までは理解出来た。なら、美琴みたいに勝負に向かっていくかというとそうでもない。

つまりはアクセラレータがどんな感情を持って、この実験に臨んでいるかを知りたかった。本当に言葉だけでやめさせられるなら、それは簡単な解決法だ。誰かを傷つけ、誰かから傷つけられることもない。そこでアクセラレータという人物を確かめる。

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離れろまではいいけれど、そこから先はほぼ無視だった。ならば、言葉で責めるしかない。そこに上条さんのミサカ妹への思いと美琴の決心が入り込んでの「三下」なんですよね。あくまで暴力で解決するのではないという姿勢だけど、アクセラレータのやっていることは所詮、「三下」であるという宣告は的を射ているんですよね。彼もミサカ妹と同じく研究者の実験体に過ぎないわけですから。

どんなに力をつけようとも、どんなに高みに上り詰めようとしても、底辺は底辺でしかなく、上条さんと同じこの学園都市に惑わされている下っ端でしかない。

それに対して、力をつけたと錯覚させるような行為として、プライドを満足させるためにミサカ妹を殺しているのであれば、それこそ底辺中の底辺の三下でしかない。この二文字に込められた意味ということでは最高の選択をしたと思います。それにこの二文字にアクセラレータはずっと固執していましたしね。

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そして、今度はアクセラレータの正当防衛ではなくなる。ただ一般人の喧嘩腰のセリフが頭にきただけ。実験の目撃者という学園都市ルールでの罪の重さがどれほどのものであるかはわからないけれど、第三者視点で見ればれっきとしたただのケンカ。

それで殺してしまえば、普通に殺人。アクセラレータ自身にだってただ言葉で罵られただけで人を殺したという罪悪感も、、、あるかな。微妙だな。

そういう意味で闘志と決意だけは負けていない上条さんの格好良さが最高でした。ただミサカ妹を助けたいだけの一般人としてではなく、美琴の思いを全て背負って代わりにこの実験の全てを否定し、アクセラレータの精神を直し、全てを正してやる。

上条さんの右手は無敵に近いけれど、それだけでは様々な攻撃守備パターンを持っているアクセラレータに勝てるかというとそうでもない。

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それぐらいに命を賭けて美琴を守るという決心だけは本物だと実感した瞬間でした。私なら震えて影から「イジメイクナイ」と言って駆け出していたと思うw。それにもし上条さんがアクセラレータに殺されたとしても、上条さん自身は美琴には死んで欲しくないと願っている。

それでもアクセラレータに向かって死を選ぶなら彼の意志を無碍にすることになる。だから、この場面での上条さんは無計画ではないんですよね。きちんと理解した上でこの場に立っていると思うと、なんだか痺れます。

そこから、ミサカ妹をベクトル変換で飛ばすアクセラレータ。それをキャッチしても痛いのは上条さんだけで、ミサカ妹は作り物の体でどうせ死ぬ定めなのだから、誰かが痛むことなんて予期していなかったというか、そこまでの優しさは必要ないというミサカ妹にも優しさがあるのだと思ったり。

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だからこそ、一体いくらとかそんなんじゃなく、少し臭いけれど世界に一人しかいないミサカ妹の人間としての扱いは美琴の気持ちと同期しているような気がして、ここに二人だけの見えない絆が見えたような気がしました。

そして、再度和解を申し出る上条さん。まあ、言っても無駄とわかれば美琴と同じように悔しさを全てアクセラレータにぶつけるまで。その上条さんがアクセラレータに向かうシーンが美琴がアクセラレータに向かうシーンと一緒でここでもリンクしているように見えました。

『超電磁砲』視点の『禁書目録』とでも言うのでしょうか。そういう意味ではミサカ妹視点も見せたりして、様々な角度からこの悪事に対してどう思うかを視聴者に問うてきているような気がします。

彼はあいつへと殺しにかかる


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アクセラレータは美琴と違い乗り気で上条さんを殺しにかかる。美琴はオリジナルで同じレベル5だからこそ、手加減してオリジナルを殺すことは実験の想定外でもあるし、ある程度は甘くしていた気がするけれど、上条さんはもう目撃者でアクセラレータ自身を怒らせたという二つの点で死に値すると思ったのでしょう。それぐらい研究者たちにとっても誤差の範囲。こういう思考が研究者たちの言いなりになっている三下なんですよね。

あとは、攻撃を派手にしていたけれど、レールを変形して一箇所に突き刺すよりもレールのピン一つひとつを散弾銃にして飛ばす方が的確に上条さんを殺せたと思う。

だけど、そこはアクセラレータの余裕というか、派手にいきたかったのでしょう。変形する必要もないレールも変形して時間を食いつつもアート的な殺し方と甚振り方を求めているアクセラレータはもう人を殺すことは狂喜乱舞な行為なのでしょうね。

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でも、今思えば、アクセラレータとの相性はそれほど良くない上条さんが生きていた不思議。ベクトル変換で物理攻撃を次々に繰り広げるアクセラレータは上条さんの右手じゃレールもコンテナも爆発も無効化できない。

ただ逃げまわるだけでもかなり困難な状況でアクセラレータが近づいてこなければどうしようもない。上条さんはいつもは不幸と言いつつも、こういう時は運がいいのだから不幸と幸のバランスがいい生き方をしています。

なので、上条さんの能力を知らずにつかみかかったアクセラレータはギャグというか、お前それ死亡フラグと言わんばかりの行為に笑えた。本当、ここで上条さんの右手を知っていたら、軽く殺せたのにね。

無知は罪と言ったものです。もう殺人を何度も行なっているアクセラレータは最高の罪人ですけどね。良い具合に上条さんから罰を受けました。

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そして、近距離戦でもアクセラレータに分があるんですよね。上条さんの右手にさえ触れなければ、上条さんの体のどこかに触れれば血を逆流させて一発で死ぬのですから。

そこは上条さんはこのアクセラレータと対峙する前から色々な能力者と戦ってきただけあって、立ち回りがうまい。アクセラレータに触れぬように交わしている上条さんは別に右手を頼るだけじゃなく、その右手を最高に活かすために訓練してきた結果なんでしょうね。

対するアクセラレータは自身のプライドのせいか緩慢な態度であってもミサカ妹を殺したり、ケンカで重傷にさせたり出来るわけで相手が向かってくれば自滅という流れが出来上がっているからこそ、体躯が弱いというか、上条さんに読まれるくらいに動きが散漫なのかもしれないです。

狂喜が狂気へ変わる時


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アクセラレータも終わってはいなかった。本当、ここまでくると兵器でしかないですね。核を超えた人間兵器として生きる道を選んだアクセラレータに狂喜から狂気へと変わりました。

学園都市を吹き飛ばせば、自らも巻き込む。いや、それはないのか。無意識的に反射の力で自分だけは守れる…はず。知識がないのでわからないけど。でも、それって本当にアクセラレータが欲した力の使い方だったのかわからないです。

最強であるがゆえにその力をもって誰でも制御出来るとはいえ、大量殺戮兵器として世界から見られれば、危険対象として攻撃を受け彼らとの戦争の日々があるはず。

だからこそ、ここでのアクセラレータって、力を欲したけれど、それが研究者たちによって人形のような人間を殺すことをいとも簡単に思ってしまったのと、最弱の上条さんに殴られて思考回路がショートしまったのだと考えたりします。私の知っているアクセラレータじゃないw。

彼女たちが必要な理由


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そこからの流れが最高だった。『禁書目録』では見れない『超電磁砲』ならではの演出。上条さん視点から美琴視点への変化と心情の変化が絶妙すぎて涙出てきた。

ミサカ妹にしか出来ないことを美琴が頼んだというのが大きいですよね。あいつじゃどうしようもないことでも、妹たちならどうにかなる。恋としての上条さんの格好良さへの憧れも美琴にあると思いますが、それ以上に妹たちの存在肯定が一番大きかった。

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いくら詭弁を弄ったとして、それは理想論でしかない。現実はこんなにも残酷で厳しいんだ。そして、ミサカ妹たちのように人間もいつしか灰に変わってしまう儚いモノ。

人間ではどうしようもないことに対して、彼女たちなら何とかしてくれるという美琴の信頼があるからこそ、動いた物語に痺れました。普通に上条さんがアクセラレータ殴って説教して終わりだと思っていました。

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ここで美琴が出てきて、そのミサカネットワークを利用し、1万体近くのミサカ妹を制御している。しかも、アクセラレータの動きを見ながら、どのように風や大気を扱っているかを美琴とミサカ妹10032号の目で確認している。

そして、二人の目から彼女たちそれぞれの役目としてこの学園都市ごとなくそうと破滅に至るアクセラレータの狙いを阻止するために生まれてきたと考えると、ミサカ妹はクローンとしてではなくこの学園都市を守る大切な個体、いや、一人の人間として必要だと始めて認識して彼女たちが生まれてきて良かった。

彼女たちは実験動物じゃなく、それぞれがそれぞれの役割を全うしながら美琴たちが彼女たちを本当に欲して一緒につながろうとする光景は感動的でした。そこまで先が読めなかっただけにこの発想は素晴らしすぎて、何度も見てしまったよ。