砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)
桜庭 一樹
富士見書房
売り上げランキング: 62,330

世界観

[ミステリ][学園][友情][グロ][シリアス]

あらすじ

大人になんてなりたくなかった。傲慢で、自分勝手な理屈を振りかざして、くだらない言い訳を繰り返す。そして、見え透いた安い論理で子供を丸め込もうとする。でも、早く大人になりたかった。自分はあまりにも弱く、みじめで戦う手段を持たなかった。このままでは、この小さな町で息が詰まって死んでしまうと分かっていた。実弾が、欲しかった。どこにも、行く場所がなく、そしてどこかへ逃げたいと思っていた。そんな13歳の二人の少女が出会った。山田なぎさ―片田舎に暮らし、早く卒業し、社会に出たいと思っているリアリスト。海野藻屑―自分のことを人魚だと言い張る少し不思議な転校生の女の子。二人は言葉を交わして、ともに同じ空気を吸い、思いをはせる。全ては生きるために、生き残っていくために―。これは、そんな二人の小さな小さな物語。渾身の青春暗黒ミステリー。

短文感想(ネタバレなし)


最初、この本を手にとった時は桜庭一樹作品にしてはなんだかロリ少女が出てくる百合作品でも書いたのだろうかということで、事前情報なしに手にとってみました。まあ、第一印象は短いな、ということで短篇集みたいな感じで200Pと軽く読めそうでした。

たまには桜庭一樹も明るい作品は描かないとね、とページをめくってみると、いきなり殺人事件のニュース記事が入っていて、その後は転校生が入ってくるという流れで、最初はその事件は全く関係なくただなんとなく流してしまったんですよね。その後は電波な子が電波なことを口走り、ミネラルウォーターのペットボトルを主人公のなぎさにぶつけたり、なんだか萌えとは違うような……と、桜庭一樹のことを疑って読み進めていくと、段々と雰囲気が変わっていくんです。

なんて言えばいいのか、もしかしたら認識が間違っていたかもしれないと思った時には時既に遅し。まさかの展開と内容に唖然としてしまいました。いや、しばらく呆けて考えに考えを巡らせたけれど意味がわからない。いや、もっと考えるんだ、と何度も読み返しました。

そうしたら、ようやく物語の本質やテーマや背景が見えてきて自分の心の中で戦慄が走ったというか、この読了感の悪さはそこへつながっているのか、と感動とも面白さとも違う新たな小説の可能性を提示したものになっています。詳しく語るとネタバレになる(短いのでほとんどが大事なシーン)ので、これは是非読んで下さい。

読んで読んで読みまくって、この感覚を味わって誰かと共有して欲しい。この『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』はきっと桜庭一樹の中での最高傑作だと思います。直木賞を取った『私の男』なんて比にならないくらいに人生の見方を180度変える作品となりました。