GOSICK III ─ゴシック・青い薔薇の下で─(ビーンズ文庫)
角川書店 (2012-10-01)
売り上げランキング: 12,760

世界観

[ミステリ][恋愛][学園][友情][中世ヨーロッパ][シリアス]

あらすじ

険しい山々に囲まれた聖マルグリット学園。その広大な敷地の奥の奥に、迷路庭園をくぐりぬけた者だけがたどりつく小さな家がある。その童話の世界のような場所で囚われの妖精―少女・ヴィクトリカは寂しく、想いをめぐらしていた。まだ見ぬ書物について。世界の混沌について。そして、とある少年のことについて。日本からの留学生・久城一弥は、風邪をひいたヴィクトリカをおいて、ソヴュール王国の首都ソヴレムを訪れる。姉、アヴリル、セシルのお使い―「青い薔薇」という宝石を手に入れるために。巨大な高級デパート「ジャンタン」で買い物をする彼は、闇の奥に光る人形の瞳を目撃する。動き出すマネキン。消える人々。そして、闇の中に蠢く謎。ヴィクトリカの知恵の泉の手助けなしに独り一弥は謎に挑むが…。絶好調ゴシック・ミステリー第三弾。

短文感想(ネタバレなし)


第3巻目も冒険作。この作品は惰性というのを感じずに読めるのが最高で、今回はとうとうヴィクトリカが安楽椅子探偵として久城一弥が活躍する物語となっております。

今までが暗くて悲痛な声を心の中で叫びながら読んでいたものですが、今回はただの久城一弥のおでかけということで明るく読むことが出来ます。いつも通り、謎や伏線があるのですがヴィクトリカがいないからこそ、何か謎が謎を読んでいき、ヴィクトリカの必要性を感じずにはいられない遠距離恋愛のような感覚を味わうような巻となっております。

特にヴィクトリカの出番が少ないからといって萌えがなくなったように思ってはいけない。そこら辺の塩梅は上手い具合にシーンの切り替えを用いつつ、貴重なヴィクトリカの通話シーンとかで色々面白さを味わえます。特にヴィクトリカが久城一弥の言葉をもとに何を喋っているかに注目して久城一弥気分で謎を解いていく過程が楽しい。

それに加え、久城一弥が孤軍奮闘して見えない大きな敵に立ち向かっていく姿勢は格好良く威勢のいい感じでぶつかっていくのですが、そこはやはり子どもとして周りに見られ、大人だったらそれなりに解決法とか立場とかで何とかなりそうな所を子どもの妄言として対処出来ない悔しさや歯がゆさがあります。

終盤にかけての怒涛の展開に舌を巻くと同時に最後に謎を解けた時のカタルシスや事件の背景などを考えると、一番読了感の良い巻となっております。