失恋探偵ももせ (電撃文庫)
岬鷺宮
アスキー・メディアワークス (2013-04-10)
売り上げランキング: 12,083

世界観

[日常][恋愛][探偵][学園][シリアス]

あらすじ

「恋はいつか終わります―」そんなことを言う後輩の千代田百瀬に巻き込まれ、野々村九十九は「失恋探偵」である彼女に手を貸す日々を送っていた。―失恋探偵。それはミステリ研究会の部室を根城にして行われる、学校非公認の探偵活動。その活動内容は「恋に破れた人のために失恋の真実を解き明かす」こと。学校内で囁かれる失恋探偵の噂に導かれ、それぞれに失恋の悩みを抱える依頼人たちが二人のもとを訪れて―。第19回電撃小説大賞“電撃文庫MAGAZINE賞”受賞の、叶わぬ恋の謎を紐解く学園青春“失恋”ミステリ。

短文感想(ネタバレなし)


最初の数行を読んでこの世界観に引きこまれました。この夕陽が差し込む放課後の中、それぞれの思いを語り合う雰囲気を情景豊かに書き綴って最高の作品になるかもしれないと思い、探偵モノと恋愛モノが好きな私にとってはこの組み合わせだけで釣られました。

そう釣られてしまったんですよね。もともとの短編受賞なので最初は出来が良かったと思う。だけど、その後が酷い。酷いというのは最初と比べてで、きっとこの後は付け足し感が満載で読んでいて苦痛とまではいかないまでも、何だか感情移入も出来ないし、心も動かないし、最初の方に見せた文章力も愕然と落ちまくったし、素人作品に評価ダウンです。

ここからは作品に対して辛口コメントを載せているので、この作品を気に入った方は読まないことをオススメいたします。

ほぼ推理という推理することもなくミスリードはあからさまだし、ミステリーと呼べる代物ではないですね。読んでいるうちにこの後はこうなるんだろうというほぼご都合主義で話が良い方に傾くのでわかりやすいです。それに推理し終わった後の心の温かさが伝わるようなエピソードになっていないんですよね。ここは第二の”文学少女”みたいに事件が解決し終わった後の読後感が欲しいです。一言でこの作品を言うなら、劣化版ビブリアでしょうね。

だけど、主人公の相方で探偵である百瀬は良かった。百瀬のキャラだけは大切に扱っていることは会話からも読み取れるし、キャラ崩壊することなく百瀬が冷静に分析するシーンとか雰囲気はかなり良い物だったと思います。このキャラに尽きるというのかな。百瀬がいないと駄作に落ちてしまうのがちょっとコワイ所です。

あとは最初良かった文章力がかなりマズイですね。まずは主人公の語彙が少ない。百瀬にツッコミ入れる時はほぼ全て「マジか」で何度も「マジ」の言葉を聞くことになります。「マジ」だけしか話さない人もいて九官鳥かおまいは、というくらいに出てくるのでマジやめてほしいわー。って、舞台が北海道だからでしょうが、男なのに「引いたわ」みたいな「わ」で終わらせるのが多いのでこれは主人公が喋っているのかクライアントの女の子が喋っているのかわかりません。それになんだかなよなよしています。性格含めてだけど。

それと、「――」は頻繁ではあるけれどある程度は許せるくらいだったと思う。だけど、クライアントの会話がほぼ三点リーダーを使って「……」を読点代わりに使っているのには最悪でした。読みにくい上に百瀬以外の全キャラが「……」を使いまくっているので、怯えて小声で震えたかのような印象として最初は使っていたのですがそれ以降、日常会話が「……」の乱用なのは文章的にはどうなのって感じます。

割合としては見開き2ページの中に三点リーダーが20回ほど出てきます。三点リーダーがないページなんてないくらい。これはオリジナリティとして編集は許したのだと思うけれど、雰囲気ぶち壊しなんだから、編集権限で三点リーダーを全て読点に置き換えてもいいと思う。そうすれば普通の文として気にならなくなる。もし、次作も三点リーダー使いまくりだったら、この作者の作品がどんなに面白くても読むのはやめますね。

あと、オタク層が読者層になるラノベなのに、作者のオタクに対する一般的偏見が強すぎたのは気になった。オタクってだけでキモイと思ってしまう男主人公。きっとこれはオタク層の人が読んだら最初に嫌悪感が出てくると思います。オタクであることを披露して失敗しただけで自業自得と考えてしまうのはどうなんでしょう。オタクであることは悪いことなんでしょうか。これを読んでいるオタク層じゃない人も、この偏見はあり得ないと感じます。だからこそ、このエピソードもなんだかなぁ、って感じで主人公に好感が全くもてないんですよね。

だから、この主人公って必要なんだろうか、って考えてしまうぐらいに魅力を感じなかった。ただ最初だけ見せた百瀬の態度を見ながら、百瀬を温かく見守るだけで没個性的であっても良かった。推理の邪魔をするだけしか脳がない主人公ももっと考えて欲しい。普通ならわかることでも百瀬をミスリードの方へと引っ張っていく。本当にこの主人公はミステリー好きなのだろうかという設定を疑う発言の数々でした。喋らなければ良い男なのにね。一般的残念主人公でした。

そして、最後のクライマックスからオチへの流れです。こここそ推理を含めてどでかいヤマを作って盛り上げる場面だと思ったのですが、ただ惰性で流れて予定調和な物語が展開されただけでした。無理やり作り上げられた感がすごいです。確かに感情移入すれば感動するようなシーンだと思うのですが、どうにも理解に苦しむ点が大きくご都合主義がここにきてすべて発揮されてしまうような誰でも作れそうな結末でした。

ラストの言葉選びや文章そのものは良かったんですよ。ただいつまでも続く自分への気持ちの模索や葛藤とか一言、一文で済みそうな所を何ページにもわたって書くのは先を読めば読むほど、いつまでこの人は語っているんだろうか?ってくらいに余計なことが多すぎでした。ただでさえ厚いのに、そこでの盛り上げ方が素人っぽくしつこかったです。

それにしても、竹宮ゆゆ子絶賛の帯はハズレばかりですね。なんでしょう? 無理やり書かされているのでしょうか。『シロクロネクロ』とか色々な点で帯に何かいいことを書いてくださいと脅迫されているように思えます。断ってもいいのにと、編集と作家の立場がわかりそうな感じでした。