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「さようなら、お姉さま」


ミサカ妹が可愛くて仕方ない。美琴とは対照的なこの動揺の無さ。初めての出会いとは偶然で奇跡的で運命的で、とは言えないほどにミサカはミャーと鳴くのでした。

ミサカ妹の可愛らしさ


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ああ、ミサカ妹が出てきたら発狂するとは思っていたけれど、ここまでの衝撃だとは思わなかった。確か感情は入っていなかったはずだけど、これは特別事例のミサカ妹なんでしょうか。『禁書目録』の第2期でのミサカ妹の一人が感情らしきものを感じ始めたけれど、その前の話なので、もしかしたら最初から少しの感情はあったのかもしれません。

子供を守りたい、猫を助けたいという気持ちがはたして感情に分類されるのかわかりませんが、弱いものを守るという意味では感情。だけど、キャッチセールスの断り方まで習熟しているミサカ妹としては誰かを助けるということが当たり前の行為としてインプットされているだけで感情とは呼べないプログラム的な行動を示すのかも知れません。

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いや、ミサカ妹は犠牲になるということはせず、お姉さまを下にするのが当たり前と言わんばかりの眼力でした。その「お姉さま」の意味することに美琴が気付き、ここでクローン計画はまだ続いているとミサカは冷静沈着に報告します。「あっさり認めたわね」という美琴の動揺にちょっと笑えた。

ミサカ妹自身にはクローン計画のことは黙っているようにプログラムされていないことは意図的なのでしょうか。それとも、美琴に隠さない方が計画に有利なのでしょうか。それだったら、薬品会社のレポートを美琴に見せる必要はなかったような……。

もしかしたら、美琴の頭ならこの計画もどうせすぐに見破られるだろうから、黙らせなくてもいいか的な研究者のノリだったのかも知れません。いや、美琴に限ってそれはないか。

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ミサカ妹はクローンだからこそ美琴と同様に本当は正直な性格を継承させたのかもしれません。それにミサカ妹が正直に話したとしてもそれを信じるかどうかはお姉さま次第。それと大事な所だけはミサカ妹は教えないようにプログラムされているようで苛立ちを感じさせるような挑発を示します。それは逆に美琴を混乱させ、君は研究者たちの手の内にあるという宣戦布告のメッセージだったのかも。

気になったのは、ミサカ妹の目のハイライトですね。確か『禁書目録』の時は白で入っていたのが今回はオレンジ。まるでガルパンのようなキャラデザに代わっていたのは仕様でしょうか? それとも、ミサカ妹の初期ロットはこんな目をしていたのでしょうか? 今の私にはわからないとミサカは諦めの意志を示します。

ストーキングの結果


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そして、宣戦布告のメッセージに対し、ミサカ妹に堂々とストーキング宣言する美琴。それはミサカ妹が機密事項を守るために美琴をミスリードする可能性もあるので、このストーキングは黙ってやるものですよね。少しは黒子を見習って欲しいです。

だからこそ、ミサカ妹の放浪の旅の始まりです。アイスクリームの濃厚な旨味を平坦に流暢に話している所はどこかのグルメマニアの人に教えたいぐらいに美味しさを述べてくれるのだから、たまらないですね。私もミサカ妹と一緒にチョコミントを食べたいものです。あ、それは美琴のか。まあ、白を切ることを堂々と述べることが出来るのはミサカ妹だけですよね。

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姉妹の複数形だから、まだクローンはいると思うのは普通なことで、クローンが一人成功したのなら、それを量産するだけで、失敗作も含め数々のクローンが作られているのは当たり前だと美琴は考えるべきだけど、ミサカ妹にまた直接聞いちゃうんですよね。

どれだけ弄ばれているんだか。どちらが姉だか妹だかわかりません。でも、お姉さまのアイスを黙って丸ごと食べてしまう幼さも持ち合わせているので、妹キャラとしてのクローンも大成功に終わって感激でした。

しかも、ミルクティーをさりげなくおねだりして強制する所を見ると子供っぽいけれど、その注文に安々と乗ってしまうお姉さまもお姉さまです。それでミサカ妹が満足して創造主のもとに向かうという条件も提示することなく、ただミサカ妹の我儘だと知らずにおごってあげることで、暗に取引したと思い込んでいるのでしょう、とミサカは素体の失態を苦笑を浮かべながら思い起こします。

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だけど、美琴にもいいことがあった。クローンなので自分そっくりで服も同じミサカ妹を鏡みたいに俯瞰することが出来る。だから、バッジを付けて似合っているかどうかの確認が出来る。

色々な角度から見て、バッジのセンスに酔いしれる美琴。大金はたいてようやく手に入れたゲコ太バッジを見つめて初めてミサカ妹にあっての楽しみを感じる美琴でした。

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ですが、いやいやねーだろとミサカの突然の言葉遣いの変化でより一層素体を嘲ります。この二人のやり取りは本当面白いです。

ラストオーダー含めて三人集まってのドラマCDを希望します。きっと今までのアーカイブCDよりは絶対売れる。

特別になったミサカ妹


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そして、今までのコメディ基調が一気にシリアスへと変貌を遂げる。確かにミサカ妹はテンプレ的な返答ではありますが、やっぱりもらったもの、プレゼント、思いというのは大事にとって置きたいと思うのが常ではある。

なので、ここで姉妹意識が美琴だけでなく、ミサカ妹にも芽生え始めてこの時点で人からの思いを受け取ると感情という変化が起きるのだと研究報告に載せて欲しいくらいです。

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それにミサカ妹も検体番号で呼ばれているから、他のミサカ妹とそう変わらない。変わらないというか自分そのもの。

検体番号の差はあるけれど、生きているか死んでいるかの違いはあったり髪の伸び具合だったり腹の膨れ具合だったりの微妙な変化はあれど、それは大差ないと見て、同じミサカ妹という括りで自らも括ってしまうんですよね。

だから、美琴というお姉さまによってもらえたミサカ妹はゲコ太バッジを付けているミサカ妹としてのオリジナリティを確立するのです。それは他のクローンより上回っているとかそんなんじゃなく、ただ美琴から特別な思いを受けたミサカ妹としての感情の発露。

残酷な人体実験


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そこからが圧巻だった。初春の美琴からの突然の電話で連続したパスコードを言われて、三文字ずつ区切ってもう一度聞くこともなく正確に聞き取り書き取れる能力はすごい。夏休みの宿題とかなくてもいいんじゃないだろうか、って思ってしまう。

そして、そこからわかる真実。ここで『禁書目録』の第1期の上条さんにそげぶされるアクセラレータへとつながっていくのですね。そうなると、実験=アクセラレータの強化計画が『禁書目録』で示されているので、アクセラレータに今までのミサカ妹が出会うことが意味するもの。その瞬間に背筋が凍る思いをしないといけないなんてね。

特別な感情を持って姉妹だと美琴に思われたほどのミサカ妹の結末。他のミサカ妹とは違うミサカ妹だからこそ、そこいなくなってしまう、いや、そのまま率直に殺されてしまうことに悔しさと哀しさと虚しさを感じてしまうんですよね。

アクセラレータが悪いんじゃないのはわかっている。だけど、殺したのはアクセラレータ。加害者と被害者だけではない裏の組織の陰謀の残酷さを感じ取りましたよ。

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かといって、アクセラレータが望むも望まぬも、レベル6へ移行できるのは彼だけなので彼も研究者のモルモットとして扱われていることには変わりないんですよね。2万のミサカ妹を殺せばいい。ただそれだけ。けれど、一歩間違えば死が訪れる。それはアクセラレータにもミサカ妹にも。

アクセラレータには代わりがいないので人間といえどミスは許されない。死んで喜ぶ人はいない。研究者から期待されている最弱で最強なのはアクセラレータ自身だと自らが認めるためにも、ミサカ妹と同様に死地を用意した。けれど、それを乗り越えられると思っているアクセラレータも問題ありなんですよね。死を選ぶか、実験として最強になることを選ぶか。

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当然、後者でしょう。だけど、そこに正しい倫理が備わっていればアクセラレータを殺せる人間はいない。もしかしたら、限られていると言った方がいいかもしれない。能力者の能力を無効にする機械を使って殺せばいいのだから。だとしたら、後者しか選べない。

でも、研究レポートを美琴みたいに把握出来ていないのかも知れません。彼をレベル6に上げるだけで脅迫が意味のなさないものだと。研究者は唯一レベル6になれるアクセラレータに死んでほしくないのだから。この時のアクセラレータは最強になるために自ら選んだ道なんですけどね。このシーンを見ると胸が苦しくなります。

残酷で残虐な風景


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そこからは画面から目を背けたくなる現実の連続。前回の失敗した者たちの処分はもとから生まれていなかったかも知れないと考えたり、思考をやめることで哀しさを紛らわせようとしましたが、それは今回のための布石でした。初めて『超電磁砲』という作品の未知数の可能性に気付いたかも知れない。

『超電磁砲』には4人で穏やかに過ごしていればいいし、誰も死ぬことはなく正義の名のもとに弱者を助け出すことに何度も成功し佐天さんのシーンとかで涙を流していたけれど、今回のはきつかった。佐天さんのレベル0は欠陥品よりも上回る情景が描けたと思う。本当は描いて欲しくなかった。

いっそのこと早く殺してあげて欲しかった。ミサカ妹にそれほど痛覚はない(と思いたい)だろうけど、血が流れ、足がもがれるシーンとか美琴を映して欲しかった。ミサカ妹は映して欲しくなかった。

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そして、最後のあがき。爆弾もアクセラレータが予測して方向転換させたように思えないのだけど、あれはどうやって回避したのか気になる。けれど、それを講釈たれてアクセラレータが説明するよりも、ミサカ妹に不敵な笑みを浮かべて近づいていく。どうやっても無理だと思わせるミサカ妹の絶望が半端ない。

足をもがれて何を取りに行ったのかはわかっていた。わかっていたけれど、わかっているがゆえに、その足掻きゲコ太のバッジを見る前に取りに行かないでいいよ、って言いたくなるくらいの悲壮感漂っていた。特別なミサカ妹としての姉との関係。それを大事にすることが出来た感情をもったミサカ妹はいなくなった。

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こうやって、感情が芽生えてきても実験で殺されての繰り返しだから、研究者は感情なんて知らないままなんでしょうね。美琴も知らないままかも知れないけれど、ミサカ妹は殺されたということを知ってアクセラレータに仕掛けた。一日だけの関係。少しだけの会話。ただそれだけでクローンは一杯いる。

だけど、それは研究者と違う感情。クローンとして製造されたとはいえ、人は人。そこの倫理観が美琴には合ったのでしょう。正しく考え正しく行動したとはいいがたい。アクセラレータに殺されたミサカ妹はどっちも実験材料なんですよね。それで特別となったミサカ妹を殺したアクセラレータへの復讐は意味をなさない。

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もっと考え、上層部の意図を調べ、アクセラレータの弱点を調べたり、初春たちを使って黒幕たちの狙いと実験と戦略それら全てを把握してから仕掛けていくべきなんですよね。だけど、ミサカ妹を殺された悔しさはじっと心に閉まっておけるもんじゃない。実の妹のように思った美琴としては全ての思いをアクセラレータにぶつけたかった。

アクセラレータにはたとえ自らの命がなくなろうとも研究者たちの狙いを断って、人として生まれたクローンを残虐的に殺していくという行為が許せなかった。こういう熱い思いをもって行動する美琴が好きです。

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今までの『超電磁砲』だったら格好いい美琴として正論を言って何とか出来ちゃうのですが、今回はただ向かっていくだけ。がむしゃらに突っ込む美琴らしさという側面を感じられた気がします。

格好悪くてもバカに見えても、それでも妹というクローンは人として生きてきたんだからその事実は否定したくない気持ちがどうしようもなく愛しいんですよね。ミサカ妹の代わりは一杯いるものと思考を切り替えられない所がやっぱり同調してしまうんですよね。

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どうしてもアクセラレータに何か言いたくなりますし、言いたくなるってレベルじゃなく、痛めつけられたことへの残虐性を認識して欲しいっていうか、もう御託を並べても仕方ないくらいにアクセラレータを上条さんのごとく殴ってみたくなっちゃうんですよね。

そして、今回で終わりのようなスタッフロール。特別なミサカ妹の人生を追悼したような儚い人生の物語。こんなに短いんだ、と感じさせられる終わりにちょっと何も言えなくなりました。どこかでゲコ太を拾ったミサカ妹は生きていると信じたくなります。