アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム (電撃文庫)
茜屋まつり
アスキー・メディアワークス (2013-02-09)
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世界観

[SF][ファンタジー][バトル][ガンアクション][コメディ][シリアス]

あらすじ

「あたしが巡り逢ったのは…最高の銃だったわ」そう言ってアリスは逝った。わたしの名前はミスター・マグナム。偉大なる魔女によって生み出された魔法の銃だ。災厄により相棒を失ったわたしは、不思議な運命により過去の世界で意識を取り戻す。そこで出逢ったのは、少女時代のかつての相棒。だがこのアリスは、とんでもないおてんばアホ娘だったのだ…。やれやれ。とはいえわたしは立ち上がる。かつての悲劇を起こさぬよう、新たな未来を切り開くために―。第19回電撃小説大賞“大賞”受賞作の、未来を切り開くマジック・ガンアクション登場。

短文感想(ネタバレなし)


王道中の王道を行く作品。喋る銃というのは何だか『シャナ』や『キノ』を思い出せばいいので、すんなり入れるし、どこか設定が凝っているかというとそうでもない。すごくわかりやすく親切な作品だと感じました。しかも、読みやすい。それだけで好印象だけど、少女アリスのバカっぷりが楽しめるコメディ面でも強さを持っているので、ただのファンタジーバトルとしてよりも全方位に向けてウケを狙った無難な作品と言えるかもしれません。

まあ、それもそのはずで、あとがきでも書いている通り、第3回電撃ゲーム小説大賞の銀賞、雅彩人なんですよね。そこから芽が出なかったわけではないとは思うけれど、そこからは何年経っているだろう。素人としてプロが臨んでも10年以上は経っているわけで、昔と比べて電撃大賞の受賞にはプロでも困難ということがわかった気がします。現時点で42歳なので、26歳くらいに受賞したのかな。そこら辺は計算していないけど、その後の険しい道程が窺い知れる作品です。

で、作品に話を戻すと、一人称で語るのは少女アリスでなく、銃のマグナムという所がキーポイントですね。きっと、これが崩れていると作品の醍醐味が崩れ去ります。未来のアリスと少女時代のアリスを比べて語れるというのはなかなか面白く、ツッコミも的確。気楽に読めるラノベとしての本質を再発見させてくれました。

アリスも俺TUEEE状態のご都合主義だと思われようと、どこか納得出来る部分があるのは設定に凝りすぎず、状況説明がちょうどいい塩梅で書かれているからなのだと思います。

特に早いテンポのガンアクションが面白く、息もつかせぬ展開でハラハラ・ドキドキさせる作品というのもそうないのかもしれません。下手な人が書くと、状況はわかるけれど、どこか緊張感を途切れさせるような説明描写が多くなってしまうので、読んでも読んでも先に進まないような感じでただ事実の羅列に過ぎなくなってしまう恐れがあります。今作はそれがなかったからこそ、ずっと集中を切らさずに読めたのだと思います。

それに加え、日常のバカアリスとツッコミガンの漫才をしながら未来を変えていくという目標があって、そこがぶれないですし、キャラもぶれないできちんと成長していくシーンが描かれつつも段々と先が読めなくなってきて続きが気になるように終始気を配っているように感じました。

ただ一つ問題として、SFの時間遡行ものとして西洋が舞台のファンタジーバトルとして王道を走るだけにこの作者としてのオリジナリティが感じられない部分が気になる所ではありました。この作者のオリジナリティとして感じたのは軽い文章でしょうか。

ガンアクションでの戦略からの特攻シリアスシーンとかでも、現実味のある残酷めいた言葉や一瞬先は闇というか死が待ち受けているのに、どこか温かさのある空気が心地いい。それはバカアリスと冷静でありながらもアリスにお付き合いする銃のマグナムが命をかけ現実に抗いながらもコメディを上手く融合させているので、堅苦しい読み物にならずに済んでいるてんですね。逆に言うと、そこまで深くはないという側面もあります。

だけど、バトルモノやガンアクションなど私が好きでない分野、いや苦手で避けている分野でも面白いと感じられたのは読者層の幅を広げる意味でも良い大賞作となっていると思いました。

電撃の大賞作は無難すぎて面白くないというのが定説ですが、これはもしかしたら、青春コメディの日常モノとか描かせたらもっと活きるような気もしてくるぐらいに愛しく思える作家でした。でも、何度も落ちているということは色々なジャンルで試して、これが受賞しているから、こういうアクションものがいいのかも知れませんね。

でも、個人的には初の電撃二度目の受賞者として、もっともっと幅広い道を模索して、電撃の柱として最高のシリーズを作っていければいいかと思いました。受賞作品の続刊でもいいし、新シリーズも面白い。年齢的にも将来性という所で難しい部分があるけれど、そういう年齢でも受賞できるということを示してくれただけでもなんだか心温まる話になりますね。本人はワナビと言っているけれどw。