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作曲の自由と規則で好対照な二人の複雑な人間模様。そんなシリアスと相対するようなヒーローバイトの顛末。


冒頭からまひると教頭で合唱部と声楽部の違いを見せて、まひるの目指していたものと教頭の目指しているものの食い違いを感じさせて不穏な空気の中始まったんですが、いきなりウィーンがやらかしてくれました。

ウィーン劇場はこれからだ!


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この教頭から感じた心の闇を一気に取り去ってくれました。さすがヒーローだぜー。とはならなかったわけで、もうなんだか痛い子というポジションを確実に獲得して作品が終わりそうなウィーンです。

だけど、そのウィーンのヒーローモノへの本気は思い出と共に今は思いが届かないヤンへとつながっているのだから笑っちゃいけないわけで、彼のヤンへの思いがなければ、「ママー、変な人がいるよ」「しっ、見ちゃいけません」ってな感じになるわけですよ。

てか、普通に商店街のお客さんの中に正義感の強い人がいれば「警察の許可は取っているの?」とかになるわけで、舞台を用意していない紗羽ママの狙いはなんだか変な方向に向かってしまいましたよ。

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まあ、普通の商店街が舞台とか確保するだけでも経費がかかるから乗り気でないのはわかるにしても、ウィーンとその仲間たちがヒーローになりきった所で背景が普通の一軒家というのがシュールで斬新すぎて、むしろ、時代が追いつかなかったように見えてしまうのは気のせいでしょうか。

見ている子はそれなりに喜んでいるけれど、ヒーローが格好いいというよりも日常の中での非日常的な現象が面白いってだけなのかも知れなかったり。でも、純粋に楽しんできた子たちもいてなんだか救われました。そして、大人は10%割引だけに興味があるわけで。

むしろ、皆が言うようにご当地ゆるキャラとか作ったり、割引セールを普通にやったほうが良かったんじゃ?とか野暮ですね。

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彼らの努力と勇気を褒め称えたい。特に和奏。初回を見て、この姿になると誰が予想できただろうか?w そして、紗羽の母娘劇。本気でやると決めたなら本気でやる主義の紗羽を本気にさせた母親を見ると、いい年なんだからもうやめなよ、ってサーフィンをやっている母親に対して言った紗羽の言葉がそのまま自分に帰ってきた所が面白かったり。

とまあ、コメディ部分はここで終わったかに見せるようないつもの和奏に毒舌っぷり。これだけ嫌味を言われてキョトンとしている来夏のメンタルの強さが羨ましい。

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そして、和奏の作曲に対する思いを経て、またもやコメディに。ヒーローは世界を守るというウィーンの理屈とそれに賭ける情熱は伝わってきたけれど、なんだかいい話かなー?みたいな微妙な雰囲気に感じてしまったのは、ひったくりを捕まえた後に、いきなりテーマ曲を歌い出すウィーンがやっぱりおかしいと感じちゃったせいだと思う。

歌詞だけでなく効果音やSEとかも言葉にしてしまうとか、ちょっとシリアス多めな感じを貫いてきた『TARI TARI』にしては珍しくコメディ色強めで、和奏とまひると教頭の話が良かっただけにもったいないかなと思ってしまった。

前回含めてのウィーン担当の横手美智子脚本がなんだかちょっと肌に合わないのかも。監督・脚本も橋本昌和が一貫してやってくれたらちょっとは違ったのかな、って想像してみたり。でも、全13話の9話・10話くらいは遊んでも問題ないかも。先が見えてきただけに。

和奏の苦悩は続く


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そして、和奏の作曲苦悩シーンへと。天才的なセンスで曲を作っている人の子供だからといって、それを受け継いだわけではない所に和奏の苦悩があるわけです。

それは父親の音楽を聞く側の人間の遺伝子を受け継いでしまった和奏として、母親からの意志を受け取ってそれに応えようと努力している姿を映しだしてくれるだけでなんだか愛しさと寂しさと切なさを感じますね。

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でも、作曲ってピアノが弾けても実際簡単に作れないんですよね。ちょっとだけピアノが弾ける私でも楽譜は読めるけれど、それは文書が読めるのと同じで、作曲ってその文書を作り出すことで、弾けると作るって全く別物なんですよね。

作曲ってほとんど自由で、何をどう音で表現しようがセンスで作れちゃう反面、そのセンスがかなり磨かれた洗練されたものでないと、美しく心に響く曲にはならないわけです。

だから、それなりに先人が築き上げた王道コードがあるわけで、Cで始まったら、Cで終わるのが美しいとか、そういった作曲に挑戦して何度も挫けて負けた私が言うのもなんだけど、勉強が必要な難しさもあるわけで、ある程度の縛りがある中での自由という意味では和奏の人生と被っている感じがして、なんだか面白いですね。

『心の旋律』という曲が織りなす二人の思いのすれ違い


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でも、まひると教頭で作った『心の旋律』は、まひるがハミングを奏でて、それを教頭が楽譜に起こすって感じだったんですね。さっきの和奏の作曲の話に再度移るけど、まひるは天才的なセンスで綺麗に聴こえる音の流れを作り出すことが出来て、『心の旋律』のサビをほとんど一人で作っちゃったんですよね。

で、教頭は絶対音感がありそうだから、その音を正確に聴きとって楽譜に起こす作業をした。で、二人で作ったことにしたまひるだったけど、教頭の言い分ではやっぱりまひるに劣等感を持っていそうで、何もかもを一人でこなしてしまうまひるは完璧超人できっとその才能に追いつくことも近づくことも出来ないと感じて挫折していたかも知れないんですよね。

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だから、まひるは二人で作ったと言うのに対し、まひるが一人で作ったと言い張る教頭。二人で作ったという言葉は教頭に対しての天才的なまひるからの憐憫に見えてしまって、教頭にとってはなんだか自慢されているような感覚だったのかもしれないけれど、まひるは教頭に楽譜に起こしてもらうことで、それをみんなで歌おうとしたんですよね。

まひるが旋律を作って、それを教頭が周りに伝えたという意味では本当に二人で作ったと思うんです。まひるは自由を、教頭は規則を、って考えると両者とも作曲の醍醐味を味わっているようにも感じます。

でも、楽譜に起こす作業は本当に教頭が言う「作業」に代わりないとも思えるので、その「作業」は楽しくないんですよね。だから、嫌気がさして、まひるみたいに音楽を楽しみたいという憧れも嫉妬に変わってしまったのかな。

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だからこそ、「一人の生徒、一人の教師」と和奏に言い聞かせるようにしながらも、それは自分に対しての言葉でもあって、気を使いすぎて疲れてきている教頭がちょっと可哀想になってきました。

もしかしたら、まひるとの合唱部が楽しかったから、それは廃部にして思い出として残したのかもしれないけれど、まひるの死の宣告に驚いていたから、やっぱり教頭としてのまひるへの対抗心として作った声楽部で教頭なりの音楽というものを一から築きあげたかったんだろうなぁ。

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で、それをまひるに見せて、ライバルとして私はあなたに追いつくために頑張っているということを伝えて、いつかは追い越したいという心意気を見せているようにも見えました。

だけど、それを簡単に挫くようなまひるのさよならの言葉が切ないです。まひるにとって教頭は友達で親密に接していたけれど、教頭はまひるの才能だけに注目してしまって、まひるに対して何かしてあげることが出来なかった後悔も混じっているのかも。

そうだとしたら、時すでに遅しで、メガネをとって目の疲れを気にしているのも、もしかしたら、悔しくて涙がこぼれそうになるのを必死に抑えているのかも知れませんね。そういう意味では教頭は見た目は強い人間だけど、中は弱いのかも。って考えると教頭が段々と好きになってきてきたり。

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