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心の隙間に眠る傷跡だと思っていた傷痕は癒してくれる存在が居続けることで少しずつ治っていくのだろう。そして、完治した時の喜びを将来に託し、少女は今を歩き始める。


プロレスって格闘技の一種で、本気で戦いあって力のある者が勝者となるようなものだと思っていました。それは単なる間違いかつ勘違いで、実際には勝つ役と負ける役がいて、その勝つ役がどれだけ負ける方をスゴイ技を見せて倒すということを演技するというもの。

良く言えばアクション劇。悪く言えば八百長。(これも太一みたいにプロレスオタクではない知識なので全く的外れかも知れないけれど)

プロレスの負け役という自己犠牲の実際


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勝つ役を引き立てるために負ける役は自己犠牲にならざるを得ないわけで、その負ける役にとっては勝つ役の大技を格好良く見せるためにある程度の受け身は出来ないといけない。柔道の受け身は負けた時を想定して受け身を練習するので、何らかの衝撃を吸収して体のダメージを最小限に抑えるという意味ではプロレスの負ける役はそれを極めた存在なのかもしれない。でも、それってはたして楽しいのだろうか?

それに大技を繰り出して負けた役の打ちどころが悪く亡くなったという話になればプロレス界は終わりを告げるようなもので、負ける役の技量が試されるというこの業界の不思議。で、それが面白くないと思ってK1などの格闘技に興味をシフトする人間もいれば、プロレスの大技を見たいがために熱狂する人もいる。

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まあ、負ける役に注目する人は稀有な存在だと思うけれどね。きっと突き詰めればどれだけ観客を楽しませることが出来るかという意味ではプロレスをやっている人たちはエンターテイナーなのかもしれない。

まあ、それを本気でやるかやらないか。こんなこと言うとプロレス好きには失礼なことだと思うけれど、本当に強くなりたいと切に願うなら、エンターテイナーになる必要もないわけで、力と力の勝負の場に移ればいい。

だけど、自らの力を見せつけたいというよりも人間にはこれだけの力を出そうと思えば出せるんだという意味での活力を与える意味では楽しさをそこに見いだせる。

普通に見ていれば痛そうだけどね。それを我慢して日々戦い続けて負ける仕事に勤しむわけだから、究極の自己犠牲なのかもしれない。

自己犠牲野郎は誰も救えず犠牲だけで終わってしまうのか


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だけど、自己犠牲という言葉は主観的で、自分が犠牲になっていると思うから自己犠牲なのであって、他人から見ればそれは犠牲でも何でもないと思われればその自己犠牲が否定されてしまうわけですね。

要は誰かを喜ばせたり楽しませたりするために、自らが負ける役を引き受けて誰かを勝つ役にして楽しませることで自己犠牲になっているわけです。

それがその誰かにとっても他人という第三者から見ても楽しくも何ともないと思えば、それは単なる犠牲になったという自己満足のエゴでしかない。きっと姫子はそのことを言っているわけなんですよね。

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ここでいう負ける役の自己犠牲野郎は太一で、勝つ役の誰かは伊織だとする。で、負けるということで自分の心や気持ちを押し殺して自己犠牲で伊織を喜ばせてはいるけれど、それは演技にしか過ぎない。

太一の本当の気持ちは伊織と付き合いたいという自らの願望があるだろうということで、観客である姫子からすると演技ばかりで楽しくない。本心をさらけ出して本気で勝負しろよ、ってことなんでしょうね。

太一のプロレス好きについては否定しないけれど、そのプロレスと同じような人生ばかりではずっと負ける役を続けてそのまま人生を終えちゃっていいのか、っていう叱咤激励でもあるんですよね。

それが少しばかり遠回りした言い方なので、今の太一には理解できない。ただの観客の野次にしか聞こえていないのかも。そこが太一の純真さでも会って良さでもあるんですけどね。

伊織の脆さの根源は…


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で、八つ当たりにも似た展開になっていく。姫子は伊織が脆いと言ったけれど、本当の伊織を姫子が知っているかは定かではない。まあ、その姫子の言葉を鵜呑みにするのもどうかと思うけれど、姫子が伊織のことを心配に思っていることだけは確かなわけで。

その方法や言動がどうであれ、人が人を思う気持ちは否定したくない。かといって、この人格入れ替わり現象を止める術もない。だから、言葉がきつくなって姫子は太一を脳天気だと言ったけれど、太一は脳天気だからこそ心が壊れていないんですよね。

むしろ、姫子の方が伊織を心配するあまり、何かを直そうとして他の何かを壊しそうにもなっている。それが風船葛にとって面白いことなのかどうかはわからなけど、そこが面白いって感じるなら風船葛は心底性根が悪い奴だと思ってしまう。

でも、面白いと感じないとこの人格入れ替わり現象は止まらない。この矛盾のような現状をどう打破していくのか。

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という鬱的な展開だったけれど、次のシーンでは唯と姫子の告白タイムというのに笑えた。姫子の苦言を呈した言葉を聞いていない義文はわかるよ。

でも、姫子にこれだけ言われても太一はふざけてこんなことやっているんだから、脳天気と言われても仕方がないな、って思えた。

まあ、被害者が姫子と唯ということで伊織が関わっていないだけマシというか、何というか。そこら辺は理解しているけれど、分をわきまえていない行動に出たわけで、姫子としても品がない態度に出てしまうというこの連鎖は面白かった。

唯の心に抱えた恐怖


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そして、また一気に加速。今度は唯にクローズアップというのだから、この作品のシリアスとコメディの緩急は上手い。心の傷というのは誰にでもありそうだけど、誰も気付かずに誰にも気付かれずに過ごすことが一番だと思ってしまうのもわかるし、逆に誰かに話せればという人にすがりたいという気持ちもあるのもわかる。

だけど、それを知られたくない人に知られてしまったら、どうすればいいのかはわからない。きっと今更弁解したって説明したって、それを信じても信じなくても、きっとその距離は広がり溝も深まる。

でも、それすらも気にせず乗り越えて飛び越えて来てくれるような人こそが本当の友達ということなんだろう。

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義文はひたすら謝ったわけでそのことに嬉しさを感じても良いくらいだけど、義文の心の傷に踏み込まずに謝る行為こそが、今まで築いてきた親密で別け隔てなく付き合えていた関係が結果的にお互いの距離を広くしてしまったことに唯は涙してしまったのだろう。

で、太一の自己犠牲はそういう意味ではいくらでも犠牲になってやるという全面的な善意によるものだから、こういう時距離を簡単に縮めてしまえるのだから、義文が言っていた通り、太一はスゴイ男なんだろう。

姫子から見ると全く逆なのが面白いけどね。そこから前回の伊織が夜一人で過ごしていることに対して敏感なのが解明された。きっと、この時義文たちは気付くべきだったんだろう。

唯の過敏すぎる反応が普通に見えてしまったのは義文のミスだと思う。でも、どうしても伊織に対する感情移入から話していると思ったからその傷に気付けなかった。もしかしたら、この時に姫子は唯から聞きだしたのかもしれないけどね。

唯の背中を押してずっと歩き続けられるように


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でも、太一は男性の恐怖の克服方法を教えはしたものの、唯はそれだけでは納得してはいないと思っていたり。身に染み付いているトラウマって一度考えを変えたとしても、また心の底からふつふつと沸き上がってくるもので、それがトラウマの恐い所なんですよね。

見えない将来への恐怖。万全に万全を期しても完全とはいえない。万が一のことも考えてしまう。それは自らが強くなっても、自らが痛みを経験しても、なかなか消えないもの。

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でも、唯は男性だけが感じる衝撃的な痛みを受けて、身を持って証明して自らの弱点と弱点の弱点を感じることが出来たという意味では普通の男性恐怖症よりは改善に向かっていくと思います。

だけど、一番大事なのは太一や義文が唯に対して絶対的な強さで抑えこむことはないという証明をこれからしていかないといけないわけで、太一の唯に対する自己犠牲は始まったばかりなんだと思う。

きっと今度はプロレスで言えば、太一が負け役に徹して、唯をずっと勝たせ続ける。そんな姿を見て、伊織の脆さを指摘して落胆した観客の姫子がどう思うか楽しみですね。その調子で伊織に対しても本当の自己犠牲の素晴らしさを見せて欲しいですね。

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