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生きることで誰かを助けられる。助けることで生きられる。そんなアンバランスな関係がより一層感じられる心温まるお話でした。


杉田がシリアスに話すと何だか自然と笑いがこみ上げてくるのはなぜでしょう。でも、そのアキラが何かをしたいという気持ちは伝わってきて、その壁にぶち当たっていることはわかっているだけにどうしようもない悲壮感が漂ってきそう。

なんだけど、タピオカとかその頭に付けた法螺貝とかのせいで、どうにも緊張感のない追い込まれ方だ。さすがDUCKの血が流れているだけあって常に遊び心は忘れていないようだ。

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それに、DUCKの防御服は既に入手しているのにわざわざ脱いで、再度DUCKの一員を倒して、また着るというその行為にも意味があるのかないのかわからない(でも、後になって考えてみたら、アキラに協力してくれる人たちの予備の防御服だったようで、そんな先のことまで考えているように見えないけど、実は考えているのがアキラの真骨頂なんだろうな)。

まあ、結論が「JFXを釣る」という明確だけど漠然としたものだから、何からすればいいのかわからなくなって、とりあえず、夏樹に会いに行ったというのはわかった。アキラは切れ者の癖して、最終的には夏樹頼みって所がユキにも似ている側面があって、この面々の性格は様々だけど、根本にあるものは一緒なんだよね。

タクシーの運ちゃんとの一期一会の友情


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あと、ユキが乗ったタクシーの運ちゃんが優しすぎて泣けた。もう、フロントガラスに付けている写真がフラグすぎるんだ。だけど、そのフラグを立てちゃう流れがわかりきっていることなのに、やっぱりいいなぁって思う。

ただ単純に「友達のため」という姿勢だけなんだけど、ユキを江ノ島まで連れていくという決心はやっぱりユキの誠意に押されてのものだとしても、そこから先には運ちゃんの命の危険も待っているわけなんですよね。

それが現地には行けない心理と相反するものだとして、ユキの精一杯の懇願に負けた図でもうお金のためじゃないよね。仕事のためじゃなく、困っている人を助けてあげたいというユキへの思いがそこには隠れているわけで、乗せた時点でもう両者とも気持ちは江ノ島ですよ。

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だけど、ユキが料金を気にして戸塚で降りるというのは、運ちゃんを気にしてのことだったと思う。もう、お金があってもなくても、こんな非常事態の中、降りてしまえばなんとかなる(というと、犯罪を助長しているようでいけないことだけど)わけで、「スミマセン、後で返します」みたいな感じで運ちゃんを振りきってハルのもとへ行けばいいんですよね。

だけど、それだと自分の必死の懇願を汲んでまで乗せてくれた運ちゃんを騙して二度悪いと思ってしまう。だから、ユキは降りるといったわけです。戸塚から江ノ島まで、走っても半日以上はかかる距離ですよ。神奈川の山から海ですからね。

それで今度は運ちゃんの優しさで返すわけですから、理由は聞いても聞かなくても降ろすことはしなかったと思います。だけど、一応聞いておいてユキの良心の呵責をなくさせるような大人の余裕ですよ。「友達のため」という理由の運ちゃんとユキの友情ですよ。年齢が離れても友を大事にする友の会みたいな感じです。それがなんだか心地よくてね。こういう非常事態にあってこそ、人の真価が問われるんだと思ってしまいましたよ。

ハルの心境


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そして、ハルに画面が移る所が上手いなぁ。ハルが今何しているのかユキの頭の中では全くわからないはずです。だけど、困っているのは確かなわけで助けに行かなければいけないわけです。

その困っている図をこの「友達のため」の間に挟んでくる所がユキのハルへの信頼とその逆もあって、お互い一人では何も出来ないひよこなわけで、そこに今まで一緒に住んでいた擬似家族の絆があるわけで、まだまだ助け合っていきていかなければいけないという反面、一人でもなんとかして抗っている姿がなんとも愛おしい。

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特に、ハルにとっては「みんな死んじゃえ」から「死んじゃやだよ」と弱気になったのは水がなくなったからではなく、大切な友であるユキを撃ってしまったことが取り返しの付かないことかもしれないという不安から、せめてユキのお婆ちゃんが大切にしていた花を助けることで自らを慰めようとしているけれど、やっぱり不安で、その不安は的中して、蛇口を捻っても水が出ない。

この時のハルの真剣で必死な表情がいままでに見せたものではない所が心に響いてくるんですよね。残された猶予も残された希望も水鉄砲の中の少しの水だけになってしまった。

夏樹とさくらの一大決心


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そして、夏樹の決心。もう、この作品は主要な4人を格好良く描いてくれるから困る。アキラの頼みは変な爺さんの戯言で信じてしまえるほどに昇華させてきた。その頼みが嘘の様であっても、それが命をかけることになっても信じられるようになったのは、きっと、さくらとの一件でアキラの助言が効いたからだと思う。

あのアドバイスがなければさくらは見つからないまま、夏樹の心の傷として一生残ってしまった、と思っているのだと思います。

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さくらを助けたことのお礼にしてはかなりの恩返しですが、そこにハルがいるから、ハルとアキラ、そして、きっとユキが関わっているから、その友情の証として、江ノ島を守るものとして、そして、釣り王子としてJFXを釣り上げる。もう格好いいじゃないですか。

釣り王子と自ら名乗ってしまうダサさもこの場面では格好良く見える。そして、また残していくフラグ。さくらを頼んだ、ってもう別れじゃないですか。

まあ、命をかけた釣りに行くのだから、これが最期の言葉になるかもしれない。だけど、さくらを自分の代わりに守ってくれる人として新しい母親候補の人に頼んだ。ここでようやく夏樹の中で家族として受け入れることができたんですよね。

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だけど、さくらの言葉通り、亡くなったお母さんの話が出来るのはお兄ちゃんだけなので、いなくなったら嫌に決まっている。けれど、その話は帰ってからだ、とばかりに去る姿がフラグで王道なんだけど、ホント格好良い以外の言葉でしか表現出来ない。

で、さくらとしてもそんな格好良いお兄ちゃんを格好良く送るべく、さくらから亡くなったお母さんへの思いが詰まったブレスレットを渡して、お兄ちゃんがいなくなったら、亡くなったお母さんもいなくなっちゃうんだよ、と、さくらにとっての意思表示も言葉ではなくモノにして伝える。

そんな仕草の一つひとつが二人の間で一人の母親という大切な人をいつまでも思う気持ちがつながっていて、兄妹以上の何かを感じましたよ。

ユキとハルのショッキングな再会


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そして、ユキとハルの再会。言葉でわからないなら、行動で示す。ハルと今まで離れていた距離、ハルと今まで離れていた時間、その全てをハルにぶつける。それが平手打ちだって構わない。自分が正しいと思ったら、正しいと思ったことを最後まで行う。自然と正義感が芽生えていたんですよね。

つまりは、目の前で震えながらユキを撃ったハルに対して、その次会った今としてはその行動に対して間違っていると言えるほどにユキはハルを思っているんですよね。ハルが嫌いならそれでいい。ハルが宇宙人でわからないやつなら、それでいい。きっといなくなって、今までの生活に戻る。

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だけど、お婆ちゃんとの約束の「さよなら」も言ってない。ちゃんとしたお別れをしていない。ハルのことを何も知らないまま、ユキは悶々とした気持ちでハルの思い出を悔しさと歯がゆさで生きていかなければならない。それほどまでにハルがユキの生活に溶け込んで必要としているんですよね。

せめて、何かも話してスッキリお別れして、ハルの幸せを願っていたい。「さよなら」も言えない友達なんて、友達じゃなかったハルから否定されたような気分になったことも平手打ちにしてぶつける。

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なんで、こんなに自分の気持ちが伝わらないのか、一番悔しかったと思いますよ。だけど、その理由が伝わっているからこそ逃したかった。生かしたかった。自分が死んでも、ユキが生きていればそれでいい。本当は生きていたいけれど、難しいみたいだって諦めてしまった節もあったかもしれない。

だけど、その諦めを叱咤するユキがいて、本気でケンカできる本当の友達になれた瞬間でもあったんだろうなぁ。ちょっとこの部分は痺れました。もしかしたら、会った瞬間、抱擁するかも知れないと思っただけに躊躇なくぶっ叩いているわけですからね。ちょっと驚きと同時に痺れました。

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で、それだけの見せ場を用意して準備万端。あとは釣るだけ。そんなこんなで噛ませ犬的DUCKは案の定操られてしまったわけで、しかも、夏樹たちの邪魔までして。これでアキラはDUCKの尻拭いをする形になるので、アキラの場所は守られた。

だけど、地球はハルはユキは夏樹は守られるのか。戦闘描写がないからこそ、明るい気持ちで来週を迎えられるけど、彼らの気持ちを知るだけでなんだか心が温まる最高のお話でした。

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