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人が知る。人を知る。人として知る。人の気持ちを知る。人の辛さを知る。人の喜びを知る。そして、釣る。


さくらの失踪の原因の一端は自分にある。そんな現実から目を背けたいからこそ、必死に探す。探して探して、その原因を知るために。でも、原因を確かめたかったからではなく、さくらの身を心配して探しているんだ、とも言い聞かせる。

そうしないと、さくらを悲しませた上に単なる家出で済めばいいけれど、そのままいなくなってしまったら、さくらも母親と同じようになってしまう。夏樹の心の中では居続けるだろうけれど、その虚しさや悲しみは母親で経験している。そして、その原因がわからないままになる。でも、わかっている。原因は自分だって。

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他人にそう言われるのが辛いから、ユキに当たる。でも、その当たり方が我を忘れたかのようではないんですよね。その非が直接自分にあると言われたら掴みかかって殴ってもおかしくない。だけど、ユキの両肩を優しく掴んで寄りかかるような体勢で反論するんですよね。

そこが夏樹の弱さでもあり、家庭の中ではさくらに頼っていた部分が大きかったというのを象徴するかのようで、強気には出れない。殴るような資格も意味もない。ユキは助けてくれる友人なんだ。

そんな認識が果たして弱いのか強いのかわからない。でも、それくらいにさくらを大切にしている気持ちだけは伝わってくる。そんな中のユキの両親についてのカミングアウト。

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今、このタイミングで言っていいかわからない。だけど、そんな弱気になっている夏樹を励ますために何とか言葉で支える。家族がいる夏樹が羨ましいというユキの気持ちはわかるけれど、今それを言うと、もっとさくらを大切にしておくべきだったんだと説教しているように感じる。

悪気があって言っているわけではないからこそ、心に響く。でも、説教は説教だ。そうやって、自分を責めるユキがいれば、それに対して反抗できる。夏樹は打たれ強い人間だとわかっているからこそ、ユキはこのことを言ったのかもしれない。

そんな弱気になって諦めずにもっと必死になって探して大切にしてやれよ。この会話の駆け引きが上手くて、二人共お互いのことをより一層理解し合っているんだなぁ、と感じるシーンでした。

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で、一番おいしい所を持っていくアキラ。この人は舞台を見る観客と思わせておいて、いきなり舞台に上がってくるから困る。しかも、観客だから舞台を冷静に眺めていたわけで客観的に物事を判断できる。

そんなアキラの助言。別に夏樹はアキラのことを信頼しているわけでもないし、アキラも夏樹のことをそれほど心配しているわけでもない。ただ、アキラは事態が事態だけに任務だけではなく、人としてどう動くべきかを知っている。

そういう意味では少し大人な感覚かも知れない。気取ってはいるけれど、お仕着せがましくない。ユキによって、さくらを探す意志を強めた彼にアキラも加わって、夏樹は仲間に恵まれたなぁ、と思われる昨今。実はこの作品の主人公はユキじゃなくて、夏樹なんじゃね?って思いましたよ。

さくらとの再会のシーン


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そして、さくらの発見。このシーン、普通に感動しましたよ。だって、さくらは周りの騒動も知らずに一人ぼっちで家出気取りで、謝るか謝らないかとか考えて拗ねているだけなんですよね。

だけど、夏樹とユキはさくらがそのままいなくなってしまうリスクも考えていた。そのギャップが、もーね。会った瞬間は、さくらは謝らずに拗ねたままで、夏樹は心配させたことを怒って叩くと普通は思いますよ。

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だけど、全く逆なことが起こるとはね。ここが夏樹とさくらだけの家族としての愛なんでしょうね。前回のブレスレットで船が揺れてお母さんがまたなくなってしまった。

さくらとしては、そのお母さんのブレスレットをなくしてしまったことに侘びを入れたいという思いとお母さんは心の中で生きているよって証明したいがための思い出の場所への逃避。それと、お兄ちゃんがそこへ来ることでお母さんを忘れていないってことの証明。この3つでお母さんへの愛が実感できて泣きそうになりました。

夏樹と父親の和解


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そこから、夏樹と父親の一対一での会話に結び付くんだから最高ですよ。さくらを見つけられなかった父親を責めるのでもなく、ただそれは夏樹とさくらの二人だけの絆だからその思い出をきっかけに見つけ出したことは大事にしたい。それにさくらの気持ちもわかった。

頭に血が上って冷静になりきれなかった自分への反省もこめて、さくらが寝るまで頭を冷やす。その間、さくらのこと、父親の店のこと、自分の将来への道を考える。

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そして、さくらが寝静まった所に父親が待っているわけですよ。喧嘩の続きをしようってわけでもなく、ただ、一緒に腹を割って大切な息子と一緒に気さくに話がしたかっただけなんですよね。

その気さくさが災いして、夏樹の怒りを買ってしまったわけですが、一応、考えていることは考えていることとして示す。挑戦してみたいこと。それは悪いことではない。

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だけど、無謀で無意味で楽観的で何も考えていないで何かをするというのは息子としても親の顔が見てみたいと言われたくないので、もうちょっとしっかりして欲しいと思っただけなんですよね。後は母親のこと。どれだけ大事にしているか。ただ、それだけ。

その二つがしっかりしていることがわかれば、逆に父親の気さくさが好転して自分の未来を自由に決めていいという優しさと期待しているという希望。その二つが愛となって表れてくるから不思議ですよね。だから、プライドの高い夏樹でも素直に「ありがとう」と言えた。そんな夏樹が徐々に進歩している姿がすごく格好いいんですよね。

失ったものは戻らないけれど得るものはこれから先一杯ある


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ユキも心の中の問題が解けそうで、友達という存在が家族としての喪失感を消してくれる。それは決して相殺できるものではないけれど、失ったものを憂うよりも、得たものを喜ぶほうが断然いい。

そんな結論を導き出せたユキはやっぱり優しい人間で、失ったものの寂しさを共有して、その寂しさを紛らわす、さくらの子供としての結論。それは大人になっても変わらないかも知れない。

自分の中で大きな存在として心の中に残り続けるとしても、一人では出来ないけど、二人なら乗り越えていける。それはお互いにとってプラスであることは、幼いさくらにはまだわからないかもしれない。

ハルとアキラが地球にいる理由の超展開


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そんな感じで、地球のユキと夏樹の問題は解決。そして、とうとうハルとアキラの謎が解けてスッキリです。いやー、全く予想もつかないと言えば嘘になるけれど、ハルの目的とアキラの目的が一挙に明らかになるというのは気持ちのいいものですね。かなり痺れました。そこからの急展開も最高でした。

バミューダ・トライアングルを起こして地球人に迷惑をかけたハルの星の人。その制裁はその星の人に対して行われる。危険因子の排除。「ダック」と叫びながら決めポーズを取る姿はいいのですが、それが格好いいと思っている彼らのゆる度が面白かったのですが、いきなり本気度が急上昇して戦争沙汰になるとはねw。

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まさかの地球での異星人の戦争。テーマである「釣り×高校生×宇宙人」。釣りと高校生は今までの物語で、ユキと夏樹の思いから色々青春の一幕のエピソードを通して、作り手の淡いメッセージが伝わって来ましたが、そこに宇宙人加える必要あるの?って思いましたが、見事につながりましたよ。

全く結びつかないものが結びついたときって爽快ですね。まるで、夏樹とその父親の関係みたいで。無理矢理ではなかった所にその狙いの上手さを大絶賛したい気分。

きっと、これを女子高生と売れ線のキャラデザでやったら大ヒットしたんだろうな、って内容の濃さと演出が光って、脚本も最高だし、もっと評価されてもいい作品だと思いました。

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