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なんだか哀しくて悲しくてしまうくらいに辛くて寂しくて、その壁を乗り越えた時の喜びがその辛さと悲しさを全て覆い隠してくれる。そんな第一歩を踏み出してこその輝ける人生。


夏樹のキャスティングがスゴすぎるんですけど。想像すればわかると思いますけど、普通のボールを遠くにある小さいバケツに放り込むだけでも難易度が高いのに、レールという糸がついているルアーというボールを摩擦係数を計算しながら竿というしなっている棒を使って投げる。

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職人技としか言えないようなことを平気でやってのける夏樹のスゴさと同時にそれが普通に出来て当たり前という感覚がもう既に初心者の域を超えさせるレベルまでのしあげようとする彼の熱意が伝わってくるのと同時に、そのレベルを求められるハルとユキの不憫さといったらないです。

だけど、そんな二人はそんなことよりも、「1,2,3」という掛け声の代わりになることに羞恥心を覚えて、あまり真剣味が伝わってこないのだけど、そんな楽天家な彼らだからこそ、こういった夏樹の厳しい要求にも不満を漏らさずに従っているんだろうな、って思うと何だか陽気な気分になってきます。

アットホームではないように見えるアットホーム


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だけど、そこからのしんみりムードがなんとも言えない感じです。せっかくやる気になって、本格的に釣りに挑もうとしているユキにとって、それは友達との絆でもあり、自分が打ち込める一つのものでもあり、ユキ自身に勇気を与えてくれるものだったけれど、それは家族という基盤があるからこそで、その土台が崩れてしまうと、その熱意というものは虚しく感じてしまう。

それだけにおばあちゃんの存在というのはユキにとって大事なヒトなのでしょうね。「今度はハルがいるから大丈夫」という言葉も、ユキにとってのおばあちゃんは唯一無二の存在であり、それがいつ消えてもおかしくないということを再認識させられた時に絶望感を抱いてしまう。

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それが「慣れている」というのはそのまま皮肉で、慣れてしまってはいけないんだ、とおばあちゃんが感じるような返答を返すユキが可愛かったり。でも、その言葉の意味を知っていても、自分の病気と自分の存在を大事にしてくれるユキがいるということが嬉しくもあり、残されたユキのことを思うと胸が苦しくなってしまうけれど、それがハルによって軽減されているような感じがして、なんだかこの空間が寂しくも心温まるアットホームな感じがします。

でも、いつかはおばあちゃんもいなくなる。それだけは理解しておかなければいけないことで、こういった不測の事態であっても、、その現実をユキが受け止められるように見守っているおばあちゃんはやっぱり優しいな、と。それをわかっているのかわかっていないのか脳天気なハルもいて、何だかこの三角関係というのが何とも言いがたい関係です。

死んだ時に生きていた時の輝きを感じる


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でそんなユキだからこそ、聞きづらいことをズバッと言える。「病気→死」という図式が彼の中で浮かんだかどうかはわからないけれど、花は最終的には死ぬのに育てるのが不可解という点を聞いてしまったり。聞けてしまったり。

真面目に捉えると、やっぱり自分の人生と花の人生を重ねてしまって、死に近くなっている自分の儚さを憂いて何も言えなくなってしまうものですが、その点、ユキならわかってくれるだろうし、わからなくても、老人の戯言を真摯に聞いてくれる。花は美しく育って、美しく散る。


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そう言えば聞こえはいいですが、あまり自分と重ねて美化しても仕方ない。そうわかった彼女は直接「死ぬからよ」と答える。生と死を言葉に出しても怖くない。そこまで彼女は達観しているのでしょうね。生きているうちは綺麗に咲いていて欲しい。

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生きているうちはユキと一緒に楽しく過ごして、ユキにとって綺麗な花と同じ存在でいたい。だけど、死は必ずやってくる。その死は決して綺麗なものではないかもしれないけれど、その死は、綺麗な生を思い起こしてくれる。思い出として生きている時の、咲いている時のその人の美しさを感じてしまう。

だから、人も花も「死んで」こそ輝く。なんだか寂しいですが、現実と向き合いながら、その生と死を受け入れている彼女は本当に心が美しい人だと思いました。

「そんな時こそ、投げんだよ」


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そして、ユキの家に乗り込んでいく夏樹が少しカッコいいと思ったり。ユキとハルとは出来るだけ関わりたくないと思っていた彼が、ユキの落ち込みで叱咤激励に行くように成長して、その二人に対しての思いが変化してきた証拠でもある。

「釣り」というキーワードでつながっている彼らを「仲間」として「友達」として見られるようになってきた。落ち込んでいる時こそ、気分転換が必要だということで、「そういう時こそ、投げんだよ」とストレス発散としての趣味の釣りを楽しんで欲しい。憂鬱な気分を投げてしまえるくらいに釣りに没頭して欲しい。

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そんな願いを感じることが出来ました。だけど、ユキの中では「釣り」に没頭して、おばあちゃんを忘れてしまうことがコワイ。釣りよりも何よりもおばあちゃんが大事だから。でも、そのおばあちゃんは「釣り」をやめることを許さなかった。そんな狭間の中で揺れ動くユキの心理を考えると、何が正しくて何が間違っているのかわからなくなってきてしまう気持ちが視聴者を何だか一層悩ませます。

ユキの変顔の秘密


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そして、そんな憂鬱を投げ出すことが出来たユキの行動に涙出てきた。辛いはずだけど、虚しいはずだけど、意味もないことかもしれないけど、それでも、おばあちゃんからの「江ノ島丼」をやめないで欲しいということと、自分の努力で自分が描いている世界を変えることが出来る。きっと出来る。

そんな気持ちを少しでも感じ始めて、夏樹の言葉と相まって、ユキはぶつかっている壁と向きあう。その壁を壊そうと必死に努力するけれども、それはどうしても壊れない。何をやっても無駄だと諦めたら終わり。だから、必死にぶつかる。思いの丈をすべてルアーへと託す。

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今までは努力して何度もトライすれば何とかなると思っていた。でも、出来ないことがあることもわかっていた。その中間に位置する江ノ島丼は出来ないことに傾きかけていた。だからこそ、無我夢中になって、その出来ないことという諦めを捨て去ろうとした。その時の描写が上手くてね。

今まではあがり症で赤面症のごとく変顔になったりしたけれど、彼はきっと変顔になる時は壁にぶつかっていった時に起きていたのだと感じれば合点がつく。転校初日の挨拶もそう。電車で席を譲ろうとした時もそう。ただのあがり症ではなくて、必死に壁にぶつかっていこうとしているからこそ、そんな顔になってしまうんですよね。

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本人は気にしているけれど、それは決して悪いコトではなくて、むしろ、その必死さが伝わってくるからこそ、その彼の努力を感じることが出来るのですよね。諦めないでいつもいつもぶつかっては失敗するけれど、今回は成功した。

それを見ていた夏樹の喜びがこれまた嬉しくてね。ユキがバケツに入れた時の喜びと夏樹がユキの努力の結果を見た時の喜びで二重の喜びを感じながら終えることが出来ました。

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