アニメ前によく話題にされるキャラ原案とキャラデザ。この二つについていつまでもアニメ素人を脱せない私として学んだことをダラダラと書いていきます。アニメーターとか作画の良し悪しとかそういうのをほとんど知らないので、それを考慮した上で読んで頂ければ幸いです。

結論から言えば、キャラに萌えや魅力を感じるとき、静止画に惚れるか、動画に惚れるかという部分についてで、キャラ原案で静止画のキャラに惚れ、キャラデザで変換された動画で動いているキャラを見て惚れて欲しいというお話です。

少々長いので、お時間のある時にここから先を読んで下さい。

結構存じている人も多いと思いますが、オリジナルアニメを制作する時にはキャラ原案を作って、それをもとにキャラデザを作るという作業が必要になります。マンガやラノベやゲームなど原作がある場合には、それがキャラ原案と同じような働きをしています。

キャラ原案の必要性


オリジナルアニメの場合、こういうアニメを作りたいというプロデューサーや監督やスタッフの要望などを交えて、イラストレーターがその要望や作品の雰囲気や自分の持ち味を出した一枚(時には複数枚)のキャラ原案を作り出します。

今までのアニメだとキャラ原案を手がける人は大体キャラごとに一枚絵で終わって、そこから他の人がキャラデザの作業に移ると思うのですが、設定資料集を作ってキャラの表情パターンなど細部までつめるときに、キャラ原案の人が参加したりしなかったり(お金の関係も絡むだろうし、その業界に詳しくないので適当なこと言っているかも知れない)、そんな感じでキャラ原案の仕事としてイラストを一枚(キャラごとに言えば複数枚)仕上げるという作業があります。この代金の相場は知らないですが大体10万円程度であまり高くないと聞いた覚えがあります(アニメ制作会社の懐やスポンサーによって大きく変わってくるだろうけれど)。

そういう意味ではラノベのイラストレーターもそうですが、アニメ制作会社がアニメを作る限り仕事があるアニメーターと違って(アニメーターもどんなに頑張っても、一枚単価200円〜300円が相場らしいのでこちらもやっぱり厳しい)、流行に流されやすく売れ線の絵が日々移ろいやすい世の中なので、アニメ業界でどんなに活躍しているイラストレーターでも専業として食っていけるほど儲かる仕事ではないので、副業で何かしらして生計を立てている人ばかりだと聞きます。

で、そのキャラ原案の描いたイラストですがかなり重要で、マンガやラノベの場合は既にマンガ家やイラストレーターが描いたイラストが本として出来上がっているので、ある程度の固定ファンが見込めます。ラノベの中で例をとると『生徒会の一存』なみにアニメ化が早くても、イラストレーターの狗神煌が十枚以上のキャライラストを描いているので、読者は幾度か見るうちに内容からキャラの性格やイラストから想像して、そのキャラに対しての印象や好感度は既に出来上がっています。アニメ化前に、このキャラがいい、とか、このキャラが萌える、など、既読者が内々で盛り上がっていて、アニメ化前から期待度が上がって、そのアニメを視聴しようと感じるようになります。

参考:『生徒会の一存』
4829132523_09_LZZZZZZZm_E7949FE5BE92E4BC9AE381AEE4B880E5AD98

けれど、オリジナルアニメは違います。それなりにアニメ業界のことやスタッフのことを知っている人なら、監督や演出家やシリーズ構成に誰が入っているかで視聴する人が多いでしょうけれど、それはごく一部(いや、今の人たちは2chなどで結構知識を持っている人が多いので、一概には少数とは言えないのだけれど)の人たちだけで、何を基準に見るか見ないかを決めるときの判断材料としてキャラ原案の比重が大きいと思っています。

アニメ制作会社や監督などでは今までの実績でどういう作品が出来るか熟年のアニヲタの人たちは想像できそうですが、ビジュアル面では何もない状態ではどういうアニメになるのかは予想しづらいです。まあ、アニメ放送のちょっと前になるとPVやトレーラーなどが出来上がっているので、動いている絵を見て期待度が増して安泰になりますけどね。だけど、全くビジュアル材料のない状態で宣伝したとしても、コアなファンしか食いつかないと思います。


キャラ原案の仕事


なので、そこでキャラ原案です。とにかく、イメージの出来る一枚絵を用意することで、そのキャラ原案を担当したイラストレーターのファンが食いつきますし、そのイメージを見て、世界観や空気や作品の質をある程度見極めることができます。だけど、マンガやラノベと違って、どういうキャラでどういう性格かというのは判断出来ません。

ここで一目惚れです。そのイラストで一目惚れさせないと、そのアニメを見ようという意欲は削がれてしまいます。まあ、絶対に一目惚れさせないといけないというわけではなくて、後述するキャラデザやPVなどによってビジュアル面で補足することが出来ます。ただ、視聴者がそこまで見たいと思うためには最初の一枚というのは大変重要で、ファーストインプレッションが悪いと、そこでその作品に対しての興味がなくなってしまい、実際にその作品を見なくなってしまう可能性が高くなります。

逆に一目惚れさせることで、話題についていこうとして情報を手に入れて視聴したいと思うという意味では、お笑いと同じでツカミさえ出来れば、あとはスタッフの力で面白さを提供してその作品が好きな人を増やす機会が増えてきます。そういう意味では、イラストレーターが描く一枚絵にはオーラというか、キャラの魅力を動きなしで伝える必要性があります。その先には見た人が想像力や妄想力をかきたてて、キャラの性格を頭の中で自動で補完して一目惚れにも似た作用があると考えています。

その一例として、『ブラック★ロックシューター』があります。これはPIXIVというイラスト投稿サイトでhukeが投稿した一枚絵を作詞作曲家のryoが見つけて、曲をつけ、絵を描いたhukeがPVに仕上げてニコニコ動画で爆発的にヒットしました。そのヒットからOVAとしてアニメ化され、そのOVAが前期TVアニメ放送になりました。これがアニメとして成功したか失敗したかどうかはともかく、話題性には事欠かないぐらいには知名度はあがっていたのでその作品のファンが付く機会を多く与えていました。


キャラデザの仕事


キャラ原案が出来れば、その後はキャラクターデザインの仕事です。キャラデザを手がける人は結構叩かれることが多く、劣化したとか、オーラがなくなったとか、あまり評価されることがない仕事にもなっています。キャラデザはどうしてもキャラ原案を上回ることが少なく(キャラデザを手がける人がキャラ原案のイラストを上回ればキャラ原案をキャラデザを手がける人がやればいいわけで…)、キャラ原案を手がける人がキャラデザをやれば文句は出ないわけで……。

なぜ、それがなかなか出来ないかというと、キャラ原案を手がける人が一枚絵を描くのに浪費した時間やテクニックなどをそのままアニメーターが動かせることが出来れば、それは神アニメというか(こちらも同じでアニメーターがキャラ原案が描いたイラストを上回ればキャラ原案をアニメーターがやればいいわけで…)、現状キャラ原案の絵を動かすことは近づけることは出来たとしても、それは大変な作業になってしまいます。

1週間に1回放送するという締め切りがあるわけで、そこで優れたアニメーターを集めても、出来上がっているキャラ原案のイラストは動かすことを目的としていないため、その作業をするだけでかなりのコストと労力がかかってしまい、現実的ではありません。だけど、多少崩しても、キャラ原案の魅力が多少薄れても、アニメーターが描きやすいイラストにすることで、時間の節約とコストの削減が出来ます。まあ、どれだけアニメーターが描きやすく簡略化するかはキャラデザの人の能力やアニメ制作会社の方針によるものかも知れませんが……。

そういう意味ではキャラデザを手がける人はアニメーターのことを考えて、キャラデザを作るわけで、アニメーターのことをある程度、いや、かなり知らないと描きやすさというのはわからないので、キャラデザを手がける人はアニメーターあがりの人であったり、作画監督もやっていたりするので、そういう面で作画に対してこだわりを持っている視聴者やアニメーターのことを考えて作画するという意味では縁の下の力持ちというか、絵に対してのこだわりを持っている人で本当にスゴイ人はスゴイのです。

なので、どういう絵が描きやすくて、キャラ原案の絵を最大限に生かせるかと考えるキャラデザを手がける人の絵のセンスはかなり重要なファクターだと思います。これはアニメ素人の私が言うことは何もなくて作画批評界隈の人たちに詳しく聞いてみることをオススメします。

でも、キャラ原案よりもキャラデザの方が好きというのも最近多くなってきている気がします。アニメーターの技術の進歩や視聴者が好みそうな絵作りを心がけるキャラデザを手がける人のセンスによって、人はキャラデザの絵の方が好みという場合もあり、先程述べたキャラ原案をキャラデザが上回ることはないという妄言を覆すような結果になってきているので、これからが楽しみになってきたりします。

あと、一枚絵の魅力は静止画として最大限に発揮できるという反面、多少簡略化されても動画として動いているキャラを見た時に惚れてしまう場合もあるので、アニメノチカラというのは本当にスゴイです。


作品ごとのキャラ原案とキャラデザの比較


ここで、キャラ原案とキャラデザでどう変わったのか色々見てもらいたいと思います。オリジナルアニメでない場合は原作とキャラデザの比較で。左、huke(Supercell)、redjuice(Supercell)、岸田メル、ブリキ、いとうのいぢという順番で2作品ずつ比べてみます。この選択は個人的に好きなイラストレーターだからなので、もっと他にも一杯いますので、ネットで見て色々比べてみて下さい。



『フラクタル』

fra_25de668a6
キャラ原案:左 キャラデザ:田代雅子 アニメ制作会社:A-1 Pictures

キャラ原案とキャラデザが違いすぎて話題になったのはこの作品が一番大きいと思っています。『フラクタル』の内容問わずにキャラ原案だけだと冒険活劇みたいな印象を受けるので、もしかしたら、キャラ原案の左はそれほど内容について聞いていないんじゃないかと穿った見方をしてみたりします。結果的にアニメのキャラデザの方が内容に合っていたので、始まってみてもそれほど違和感は感じなかったです。



『夏色キセキ』

kiseki2012013000451440e
キャラ原案:左 キャラデザ:田中雄一 アニメ制作会社:サンライズ

で、こちらも同じ左原案だけど、アニメでは原案と違ってしまう哀しみ。左はこれで満足しているのか不安になりますが、この水彩画タッチ風の絵柄でアニメで動かすのは難しいのでしょうね。天下のサンライズでも、これぐらいになるのですね。しかし、初回を見てみると、どこかで見た絵柄だと思ったら、『とある科学の超電磁砲』のキャラデザ担当だったのですね。顔のハイライトの入れ方に特徴があってなんだかキレのある顔になります。



『ブラック★ロックシューター』

1024x768sm_BRS0302_top
キャラ原案:huke キャラデザ:芳垣祐介 アニメ制作会社:Ordet、サンジゲン

この作品の場合、OVAを間に挟んでいるから、そのキャラデザは松尾祐輔が担当しています。松尾祐輔は元京アニ所属だった原画マン。作画監督もやっているけれど、キャラデザはOVAが初めて。対するTVアニメのキャラデザの芳垣祐介は背景ほぼ実写じゃね?で話題になった『魔法遣いに大切なこと〜夏のソラ〜』でキャラデザをやっています。表情の微妙な変化など細かい部分での気配りが出来ていた印象。



『Steins;Gate -シュタインズゲート-』

animgnet_steinsgate003110413_sg_anime-thumb-400x400-1673
キャラ原案:huke(ゲーム原作) キャラデザ:坂井久太 アニメ制作会社:WHITE FOX

生気のなかったhukeの絵がこんなにも表情豊かに……。って、これも好き嫌い分かれそうですが、キャラデザの坂井久太はさすが総作画監督を長年やっているだけあって、hukeのクールな雰囲気を保ちつつ喜怒哀楽がハッキリしていて作品の持ち味を最大限に出してくれました。『苺ましまろ』や『ひぐらしのなく頃に』などのキャラデザをつとめて、女性だけに少女の可愛さを知っている方です。『ミルキィホームズ』もこの方がキャラデザやっていれば違うアニメになっていたでしょう。あと、今期は『さんかれあ』のキャラデザをやっています。やっぱり、可愛い。



『ギルティ クラウン』

c6197464e298fd4cdc5e049185c67fba45f7a74b
キャラ原案:redjuice キャラデザ:加藤裕美 アニメ制作会社:プロダクションI.G 6課

個人的にスゴイ好きなキャラデザにしてくれる加藤裕美。redjuiceもredjuiceで、ファンタジックでありながらも無機質で冷めた表情が多いのですが、これはアニメのキャラデザの方が好きですね。特にいのりの絵は内容的にはredjuiceの方が合っているような気がするけれど、いのりの髪のグラデーションとか幼さの残る不思議少女としての可憐さがあって良いアニメ化だったなぁ、と思います。



『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』

th02th05
キャラ原案:岸田メル キャラデザ:赤井俊文 アニメ制作会社:A-1 Pictures

この作品でキャラ原案とキャラデザの違いについて論議されて波紋を呼んだアニメはないと思う。京アニの堀口絵が好みの赤井俊文が岸田メルのキャラ原案の欠片もない絵柄になったということで、放送前からかなり批判的な視聴者が増えていた気がします。それだけ岸田メルの一枚絵が素晴らしかったということと、その絵に惹かれてこの作品を見てみようと思った人が多くなったと思うので、話題を取るという意味では大成功だったと思います。だけど、この作品はキャラ原案をなくして、キャラ原案もキャラデザも赤井俊文がやっていれば、堀口絵が流行っていたので全く印象が変わった作品になったんじゃないかと思っていて、ちょっともったいない気がしました。



『花咲くいろは』

cbca4eb0iroha0403_top
キャラ原案:岸田メル キャラデザ:関口可奈味 アニメ制作会社:P.A.WORKS

『true tears』で実績のある関口可奈味だったら、描くのがかなり難しそうなメル絵もそれほど変わらないんじゃないかとアニヲタ界隈で言われていたような覚えがあります。『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の悪夢再びとか言っている人もいましたが、アニメが始まれば黙ってしまう程にキャラの描き方にこだわりがあったと感じています。きっと、これは関口可奈味だけでなく、優秀なアニメーターが揃っているP.A.WORKSならではなのかもと思っていたりします。

緒花のあの髪は描くだけでなく動かすのは大変だなぁと思いつつ見ていたけれど、全く崩さずに最終回を迎えることが出来たというのは素晴らしい実績だと思います。



『神様のメモ帳』

cff265526b32b4472908e1e44a97194d20110704032404f44
キャラ原案:岸田メル(ラノベ原作) キャラデザ:佐野恵一 アニメ制作会社:J.C.STAFF

岸田メル3つ目なので、こちらはおまけ程度で。アニメーターの中では知る人ぞ知る人みたいでかなりのファンがいるみたい。キャラデザはこの作品が初だけれど、良かったと思います。前期に『花咲くいろは』があったから、あまり話題にはならなかったですね。



『電波女と青春男』

imagesCAA8B31Tdenpa1
キャラ原案:ブリキ(ラノベ原作) キャラデザ:西田亜沙子 アニメ制作会社:シャフト

キャラデザでかなり実績があり、ブリキ絵を再現できるならこの人しかいないみたいに言われていたくらいに魅力的な絵を描く人。簀巻きになっているエリオが多かったから、シャフトも頑張れたのかな? いや、リューシさんもいたし、表情も照れ具合とか笑い方とかとても丁寧に作られていました。個人的にシャフトの中では絵柄も含めて全てが大好きな作品です。



『僕は友達が少ない』

7599aea1imagesCAFNB5H9
キャラ原案:ブリキ(ラノベ原作) キャラデザ:渡邊義弘 アニメ制作会社:AIC Build

渡邊義弘はメカデザインからキャラデザに変わったみたいで、『夜明け前より瑠璃色な』や『そらのおとしもの』などのキャラデザを務めているので、エロを含む萌えアニメではかなりの実績があるので、この絵柄も納得。西田亜沙子といい、渡邊義弘といい、アニメで難しそうなブリキ絵をあまり批判なくこなしていた印象なので、これはある意味原作信者もアニメ信者も幸せな形だったのかも知れない。



『灼眼のシャナ』

shana5120110508110058
キャラ原案:いとうのいぢ(ラノベ原作) キャラデザ:大塚舞 アニメ制作会社:J.C.STAFF

のいぢ絵は京アニで作られた『涼宮ハルヒの憂鬱』のキャラデザが良すぎて、あまりのいぢ絵という意味では話題にはならなかったですが、何を描いても、のいぢ絵になるシャナを放送開始当時としては出来るだけ可愛いだけで終わらせない様に凛とした強さを併せ持つキャラデザにしていたので評判は良かったと思います。でも、2011年になっても絵柄が変わらなかったのはファンとして嬉しいんだか悲しいんだか。



『Another』

41fea3211540
キャラ原案:いとうのいぢ キャラデザ:石井百合子 アニメ制作会社:P.A.WORKS

で、こちらはP.A.WORKSののいぢ絵で、シャナと比べたら、きっとこっちの方が好まれそうな絵柄となっております。時代と共に技術も進歩していくので、5,6年の間にアニメーターのレベルも上がって、こういったのいぢ絵が描けるのだなぁ、としみじみと思ってしまいます。



以上、キャラ原案とキャラデザを比べてきました。静止画のキャラ原案の魅力はここに貼ったものである程度理解できるとは思いますが、動いてナンボのキャラデザは静止画だけでは理解出来ないと思いますので、実際に見て絵についてこだわりを持つのもアニメを見る醍醐味でもあると思いますので、この記事が貴方のアニメ観に少しでも影響を及べせば幸いです(そう言いながらも、私は作画については何も知らないので、的外れなことばかり言っているだけなんですけどねw)。