猫物語 (白) (講談社BOX)
西尾 維新
講談社
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世界観

[日常][恋愛][ギャグ][青春][怪異]

あらすじ

君がため、産み落とされたバケモノだ。
完全無欠の委員長、羽川翼は二学期の初日、一頭の虎に、睨まれた―。
それは空しい独白で、届く宛のない告白…
<物語>シリーズは今、予測不能の新章に突入する!

短文感想(ネタバレなし)


「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」――

この言葉がここまで意味深なストーリーの一端を担っていると考えさせると、それだけで涙腺が緩んでしまう。それだけ、自分を追い詰めて、追い込んで、思いつめて、人かどうかすらわからなくなってくる。そんな羽川翼の辛い辛い物語。

今回は阿良々木視点でのストーリー展開ではなく、羽川翼視点でのストーリーです。そういう意味では阿良々木暦という変態度がなくなって、マジメな委員長ちゃん視点での物語なので、ギャグは少なめ。いや、ほとんど笑える部分がない。何か笑ってはいけない雰囲気を醸し出している。

それほどに現実や環境に対して前向きでありつつも、どこか後ろ向きな感情を抱きながらの生活模様を描いている。もちろん、化物語キャラは出てきますよ。だけど、それは阿良々木暦というツッコミキャラがいてこそで、羽川翼という普通じゃない普通の人間ではキャラの掛け合いでの笑いの加速度がつかない部分では少しだけ惜しい。

でも、『猫物語(黒)』で羽川翼の全てを描ききったと思ったのに、300ページ近い分量で羽川翼についての詳しい言及ができる時点で、『化物語』では、まだまだ彼女の魅力の一端も見えていなかったと実感。素朴なメガネを書けた委員長キャラから一気に転落。いや、飛翔か。まあ、それは読み手次第だけど、イメージは大きく変わることは間違いない。

人間は誰しも未完成で不完全で、どこまでいっても一人は一人でしかなくて、厳しい世の中でいつでも闘い続けている。それが目に見えないだけで、一人の人としての役割を世の中でどう全うすればいいのか悩みに悩んだ末の結論までの推移がとても興味深く、哀しさの終着点を目指して這いずり回る一人の少女としての生き様に惚れてしまいましたよ。

今まで、羽川翼というキャラにそれほど魅力を感じていなかったけど、改めて好きになりました。他のキャラが濃すぎるせいで埋れていただけで、十分に羽川翼というキャラを存分に味わえました。

どうやら、この物語を堺にしてセカンドシーズンとして、このシリーズはまだまだ進んでいくらしいので、楽しみに待ちたいと思います。それにしても、誰もが抱える悩みを上手く面白いように味付け出来た西尾維新の世界というのはまだまだ膨張する宇宙のようで、これからも一ファンとして追いかけ続けたいと思う。