好き、だった。 はじめての失恋、七つの話。(MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)
有川浩 朝倉かすみ 梨屋アリエ 石原まこちん 吉野万理子 紺野キリフキ 宮木あや子
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世界観

[日常][恋愛][純愛][失恋][双子]

あらすじ

はじめて恋を失って、はじめて本気で好きだったのだと気づいた―。有川浩、朝倉かすみ、梨屋アリエ、石原まこちん、吉野万理子、紺野キリフキ、宮木あや子ら七人の人気作家たちが、人生はじめての大切な失恋を綴った小説アンソロジー。終わった恋、始まらなかった恋、始めてはいけなかった恋…七人七色の失恋のカタチ。はじめての失恋には、恋愛のすべてがつまっている。

短文感想(ネタバレなし)


有川浩が好きで、この本を選んだのだけど、ちょっと短編過ぎた。確かに、有川浩は長編も短編も上手いと思う。長ければ長いなりに色々なメッセージを発信できるし、短ければ一つのテーマに絞って掘り下げるなど、読者を飽きさせないように筆をとっている感じだ。

今回のテーマは「失恋」。恋愛を描くのが最高に上手いと思っている有川浩ならではの独壇場を期待していたんだけど、それほどでもなかったかな。本当、失恋がテーマとなっているけど、思っていたのとは違う路線を走る独自性が面白いんだけど、わかりやすさを重視したために、ちょっとした日常で終わってしまった。

別に日常も楽しいですよ。そこにどんな感情をもって暮らしているのかとか、有川浩なら心の奥底まで探りに探りを入れ、それを飾らない文章で言語化までしてくれる。そんな有川浩の持ち味を出せてきたかな、と思わせる所で終わってしまったので、もう少し長ければ、かなりの傑作になったと思う。

でも、美しい物語だよ。本当、着飾らない。純粋な心と感情。それが正しいか間違っているかは読者の判断だけど、その登場人物の擁護に懸命に、かつ賢明に見えるように有川浩フィルターが入っているので、心が揺れ動く。ほんの一言。ほんの些細な感情の吐露でさえも、そのフィルターを介せば、美しいものへと変化する。

それが小説家という職業の本質でもあるのかもしれない。そんな気分にさせるくらいに彼に惚れてしまった自分がいるのかも知れない。好きな作家はどうしても自分の中でのハードルをあげてしまう。これからも、追いかけていきたいくらいに魅力ある文章を見続けたいです。