零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
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世界観

[現代ファンタジー風][シリアス][コメディ][殺人鬼][伝奇]

あらすじ

「零崎一賊」――それは“殺し名”の第三位に列せられる殺人鬼の一賊。
兄弟になったばかりの零崎人識と無桐伊織は人類最強の請負人・哀川潤を勝算を持って襲撃する。しかしその結果二人は彼女の『仕事』に巻き込まれる羽目に! 向かう場所は“殺し名”序列二位、闇口衆の拠点・大厄島、向かう敵は生涯無敗の結晶皇帝、六何我樹丸!

短文感想(ネタバレなし)


この本の主人公は人間シリーズとしての零崎人識なんですが、あまり人柄が好きではないんですよね。殺人衝動も人を一人殺めるだけでは物足らずに殺人鬼となる過程を自分の血筋という隠れ蓑を用意しているわけで、彼が踏みにじった人生を考えると悲しくなってくるわけです。

なので、正義感や倫理観にとらわれず、彼個人としての生き様を楽しむという作品なのでしょう。殺人と聞くと、誰かを恨んだり憎んだりして、人を殺めるほどの衝動に襲われてからの行為だと思うのですが、この零崎周囲の殺し名は憎むということはしない。だからこそ、心を傷つけられるということはない。

人を殺めても罪悪感がないわけだから心が傷つくことはないのだろうけれど、孤独という文字が自分の周りをちらつく。周りの人間に対する殺意は人とのコミュニケーションを終わらせる術を持っており、孤独との闘いになる。そういう意味で人間シリーズとして人との関係を考えて欲しいという本作なのでしょう。

バトルを好むことで体も傷つき、緊張感ある毎日を生活することで心も蝕まれて、彼のこの世の中での役割や目標といった類の一般人が考えるであろうことは零崎人識にはない。だからといって、格好良く生きているわけではない。虚無感と絶望を抱きながらも何か人と違うことを追い求める姿勢には感心させられる。

まあ、人識の話はいいでしょう。ここでは伊織がピックアップされているので、この子の可愛さにメロメロになるがよろし。それに加えて、闇口崩子という美少女もいるわけで零崎人識ハーレム状態なわけです。あぁ、崩子のイラストがあったら嬉しかったんだけどな。ワンピースを着ている美少女という響きだけで嬉しくなるね。

そんな感じで全編シリアスってわけでもなく、化物語で身につけた会話での笑いもあるので、気楽に読めます。それに戯言シリーズでの余韻として人間シリーズが用意されたわけなので、戯言シリーズ好きな自分としては色々出てくる思い出に浸りながら、この世界観を堪能するだけでもオトクな気分になれます。

伊織はかわいいですよー。しゃべっているだけでも楽しいし、フォロー入れようとして墓穴ほっている姿とか見ると、ずっとこの子のことを見ていたいって気になります。そういう意味ではキャラへの愛着をつけさせる天才な西尾維新さんでした。