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佐天さんはなぜ能力にこだわるようになってしまったのか。
なぜレベルアッパーという甘い罠に手を出して、後から後悔する結果になったのか。

最初に会った御坂美琴が良い人に見えてしまったから、というのが有力な説に見える。

そんな無能力者である佐天さんが抱える物語を振り返ってみたい。

それは佐天さんが初回で初春に話したように、能力者というのは、能力を笠に着た上から目線のイケ好かないやつだということ。能力があれば何でも出来るし、出来ない人の気持ちなんてわかるわけがない。

だから、高能力者は自分たちを見下しているに決まっている。そうでありたい。そうであることで、佐天さんは届かないであろう将来を見つめないですんだ。

美琴に会ってみると、意外にも好ましい感じの人で、正義感も強く憧れを感じてしまった。自分と近い歳なのに、自分には出来ないことをやれる。人間性も全く問題ない。

自分のある種の理想型に美琴が見えてしまったんですね。佐天さんが美琴に憧れを持ってしまうことや友達として付き合っていくことは何の問題もない。

だけど、憧れを身近に感じることで、ある種の焦りや羨望を覚えてしまったこと。これが問題なのである。以下にその理由を簡単に。

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美琴は「能力=才能+努力」だと思っている。
佐天さんは「能力=才能」だと思っている。

この二人の感覚の違いって、結構、顕著で難しい問題なんですよね。
美琴は努力次第でどうにでもなると考えていて、努力の末に能力は獲得できるものと思っている。佐天さんはどんなに努力しても能力は身につかない。きっと、才能なんだ、と思い込み始めた。

人には出来ることと出来ないことがあって、何もしなくても出来ることがあれば当たり前に見える。何をしても出来ないことがあれば、それは自分には出来ないものだと思い始める。

出来ることと出来ないこと。経験を積むにつれて自分の中でわかってくる。
でも、人の力を借りて出来ることもある。何かの弾みで出来ることもある。
だから、自分の限界を容易に決め付けることは出来ない。

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なので、周りの思いや感覚というのは本人にとって大きな影響力を帯びる。朱に交われば赤くなるという、ことわざ通り、能力も伝染すればいいけど、伝染するのは能力ではなく、他人の気分や感覚である。

先に述べた美琴が思っている「能力=才能+努力」が伝わり、佐天さんの思いに残った。そこには才能だけでなく、努力が足りていないと自分を責める結果になった。

美琴は佐天さんの努力が足りないと指摘することはなかった。
だけど、そのことをほのめかすようなことは言っているので、
佐天さんは自分が間違っていると感じ始めてきた。

今のままの自分でいい。自分は自分。他人は他人と割り切れなくなった。
そのことをレベルアッパーを使って体に異常をきたして、
初春に助けを求める佐天さんとの会話から考える。

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私、何の力もない自分が嫌で、でもどうしても憧れは捨てられなくて……。
ママ……。
レベル0って欠陥品なのかな?
それがズルして力を手にしようとしたから、バチが当たったのかな?
危ないものに手を出して、周りを巻き込んで、私……。

大丈夫です。もし、眠っちゃっても、私がすぐに起こしてあげます。
佐天さんも明美さんも他の眠っている人たちもみーんな。
だから、ドーンと私に任せちゃってください。
佐天さん、きっと「あと5分だけー」とか言っちゃいますよ。
佐天さんは欠陥品なんかじゃありません。
能力なんて使えなくたって、いつもいつも私を引っ張ってくれるじゃないですか。
力がなくても、佐天さんは佐天さんです。私の親友なんだから……。
だから、だから……、そんな悲しいこと、言わないで……。

ふ、うふふ……、初春を頼れって言われてもね。

私だけじゃないですよ。御坂さんや白井さんや他にもすごい人が一杯。

うん、わかってる。ありがとね、初春。迷惑ばっかかけてごめん。あとはよろしくね。

この二人の奏でる友情の響きが心に伝わって、心の涙としてこぼれおちる素敵な会話。
だけど、意外とかみあっていないんですよ、この会話って。

佐天さんはレベルアッパーを使って、「能力=才能+努力」の努力部分を飛ばそうとした。それは努力しなければ手に入れられなかったものを、ズルして手に入れた。努力を怠った。そのことに後悔を感じて、初春に助けを求めてきた。

いや、佐天さんの中ではただの謝罪の言葉だったのかもしれない。このまま、佐天さんが起きることがなかったら、この言葉を両親に伝えるだろう。レベルアッパーの被害者に対する偏見はあるとはいえ、佐天さんの良心が守られることになる。

悪いことをした→後悔→謝罪という意味で、一つの罰を身に受けて裁きが下った。そう、佐天さんの中で事の顛末が終わりを告げる筈だった。

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だけど、初春が言っているのはレベルアッパーを使ったことを責めているのではないし、無能力者が努力を怠ったことを責めているわけでもない。

ここで、この言葉。「佐天さんは佐天さんです」。
自責の念にかられている彼女を少しでも、その罪の意識を和らげようとする言葉。
レベルアッパーに頼った佐天さんも佐天さんだし、無能力者の佐天さんも佐天さんです。

才能があってもなくても、努力してもしなくても、そこにいるのは佐天さん。
初春が言いたかったのは、能力があるかないかは今は関係ないということ。
いや、今も昔も、将来も、関係ないんだろう。

佐天さんがしてくれたこと。佐天さんがいてくれたこと。それは一個人として彼女を必要している自分がいるということは忘れないで欲しいということ。そして、それは能力を関係なしに自分が支えられてきたことを訴えている。

だけど、佐天さんはその部分はあまり理解出来ていない。きっと、現実に死という単語が頭の中を巡っているがゆえに真意を掴みとることができない。

だから、「初春を頼れって言われてもね」、って言葉が出てくる。だって、初春はレベル1でしょう。無能力者側に近いんだから、どうしようもないよ。やっぱり、この世の中は能力者が全てだったんだよ。

という言葉が伝わってくる。だから、仕方なく、初春も高能力者の名前を出す。今は混乱している佐天さんを安心させるために……。美琴の名前を出す……。

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とまあ、こんな感じで簡単にこの部分の勝手な解釈をしたわけだけど、
初春が高能力者を前にして自我を保ってきたのは自分が出来ることをわかっていたから。
佐天さんは普通に生活する分には何も問題なかったけど、高能力者と関わってしまったから。

この低能力者の二人の感覚の違いというのは大きな差に出てきて、初春は第4話での黒子との昔の話があった分、自分の分をわきまえられたんだろう。

ここでいう、自分だけの現実(パーソナルリアリティ)である。レベルアッパー編の締めとして、この言葉が使われたが、自分の中での現実を受け入れる力が大事。まあ、彼らはその自分だけの現実を突破して、異能力を手に入れろということだった。

でも、私は逆の解釈で受け取ってみる。突破できなくてもいいんじゃないかな。自分だけの現実を受け入れて、その現実に満足していれば、それだけで事件は起きない。無理してでも、何かを手に入れようなどと思わない。そういった冷静に将来を見据えた現実。

自分には何か足りない、自分にはもっと力が必要。そう思うことは別に悪くない。だけど、佐天さんが笑顔でいられるなら、今のままでもいいじゃない。何かを失ってまでも、何かを手に入れようとしなかった、美琴と付き合う前の佐天さんで良かった。

なので、佐天さんが美琴に会うのではなく、婚后光子に会っていれば、問題にならずに済んだんだけどね。まあ、そうしたら、物語すら始まっていないですね。あぁ、やっぱり、能力を笠に着る人だーってねw。