神のみぞ知るセカイ-0(4)神のみぞ知るセカイ-0(5)

守るのは自分の心、それとも、今までの変わらない自分?


美生の転機。それをチャンスと見るか、ピンチと見るか受け取り手次第。
人によってはチャンスだし、人によってはピンチ。
裏をかえして、ポジティブにとらえれば、自分を変えるためのチャンスでしかない。

人間というものは様々な難関に立ち向かい、今の自分を受け入れ、
今の自分を変革していく。それが経験となり、人としてのポテンシャルを向上させる。
美生も何も彼女に訪れなければ、富豪という保護シートに守られた人生。

別にそれは間違っていない。そのままの人生が歩めるならば、別にいいだろう。
貧富の差があるのは日本に限ったことではないのだから、当然の権利だ。

だけど、人間性を小さくするという内面の強さがどんどん弱くなっていく。
何かに守られるということは、何かに立ち向かうことから逃げていることでもある。

だからこそ、臆病になる。前を向いて生きられなくなる。現実を認めない。
様々な彼女を追い込む要素が次々と襲いかかる。そこに守ってくれる人はもういない。

神のみぞ知るセカイ-0神のみぞ知るセカイ-0(1)
そんな弱くなっている心で、世間の荒波に立ち向かう。心細いだろう。
プライドがズタズタにされるだろう。仲間も作りにくいだろう。
全ては自ら行ってきたことに対する因果かも知れない。自業自得。そうとも言える。

だけど、彼女には大切にしている、もう一つの何かがあった。父親の笑顔だ。
父親に喜ばれるために頑張るし、父親の思いというのは忘れたくないから。
父親から褒められた自分を変えたくないし、父親を忘れたくもない。

そんな葛藤の末に、何も彼女は選択できなかった。
適応能力がなかったといえばそれまでだ。
だけど、彼女の父親に対する周りの目が痛いからこそ、自分は守りたい。

高貴な自分を出すことで、周りが父親を忘れることがないようにする、そんな使命感。
そこに意味はない。彼女がどんなに着飾っても、どんなに強気に振るまおうとも、
お金のないやつは、もう厄介払いなのだ。それが資本主義社会。

そんな風に彼女が振舞う理由について、桂馬がわかったことが大きい。
何も今の性格は、彼女が願っているわけではない。父親という存在を忘れないよう。
父親と相思相愛の時間を過ごしてきた自分を変えることができないからこそ。

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でも、そんな自分の人生を捨ててまで全うしようなんて、彼女の父親は願っていない。
その伝え方の上手さが桂馬の魅力でもあり、言葉の魔術師たる所以なんだろう。

自分のために生きる。自分だけのために生きて欲しい。
自己中で自分のことしか考えていないキャラだと思っていたら、
自分のことを考えていないキャラだった。それを知るは内奥に眠る思いを知る者だけ。

青山家の誇りを大事にしてきた彼女。
その誇りはどんな境遇だって受け入れられることも含まれる。自分を守るすべとして、
高貴に振舞うことも、謙虚に生きることも誇りのうちに生きているのだから。

父親の言いたかった誇りは、自尊心のこと。
自分の心をいつも守り、プライドを傷つけられても気にせず強く生きること。
たった、それだけのことだけど、彼女は誤解し守らなくていいものを守ってしまった。

そのことに気づいたときの彼女の顔がとても切なくて、良い表情でした。
心の隙間を埋めていた小さな凝り固まったプライド。それが緩和されて、
正しいプライドを保てるようになってきた彼女の性格と未来に完敗です。