刀語「悪刀・鐚」-0刀語「悪刀・鐚」-0(1)

自らの生まれた苦しみを他人と分かちあえない苦しさ。


彼女は弟を正義にするために、自らを悪に染めた。
悪役をかって出たといえば、響きはいいのだろう。

だけど、彼女自身が生きる意味を忘れていた。いや、最初からなかった。

だからこそ、一度目は父から剣術を託され、二度目はとがめから依頼され、
人生に意味のある生活をしている弟がうらやましかった。

その嫉妬と最初からある挫折感から、弟を振り向かせたかったがために、
殺された人々が、とても可哀想という言葉では表現できないほどに無念。

ただ、ゲームの如き、敵キャラの一つのコマとして、主人公に倒される。
しかも、それが正義のためではなく、悪のもとに屈しなければいけない、
その非力さと無力さに自ら嘆きながらも、この世の矛盾に憂う。

人の価値や、今まで生きてきた意味、これからの将来、
その全てを、ただのあてつけのように、自分が得られなかった不公正を、
公正にする、その行為。それ自体は、仕方のないことに見える。

だけど、そこは、幸せな人生の方に照準をあわせて、
この世の中が公正になればいいな、と私もこの話を見ながら思った次第です。

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)
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刀語  第二話  斬刀・鈍 (講談社BOX) 刀語 第三話 千刀・ツルギ 刀語 第四話 薄刀・針 (講談社BOX) 刀語 第五話 賊刀・鎧(ゾクトウ・ヨロイ) (講談社BOX) 刀語 第六話 双刀・鎚(ソウトウ・カナヅチ) (講談社BOX)

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