アスキーメディアワークス
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世界観
[ホラー][不思議][恋愛][学園]
あらすじ
男の家には美しい女の死体があった。けれど男は「彼女は死んでいない」と言い張り―(『クックロビンの埋葬』)。「夜一人で道を歩いていると、頭に袋を被って、手に鉈を持った奴に首を刈られる」友人からそんな都市伝説を聞いた少年は―(『ヘッドハンティング』)。日常の隣に潜む、妖しい物語たち。それらを語るために私たちは集まった。もちろんリアルな話じゃない。それは怪奇小説サイトのオフ会で、ホラー好きの5人が、それぞれ紡いだ物語を披露するという集まりだ。だけど、彼らの話はあまりに生々しく、やがて現実と虚構は交差して…。
短文感想(ネタバレなし)
前作の「ロミオの災難」を読んだときは、この人、ホラーでもいけるんじゃないか、と思っていましたが、やはりホラーの書き方が上手いです。ただ、単に怖い話というだけでなく、その怖い話に主人公の感情を緻密に精細に描いているので、緊張感がこちらにも伝わってきます。
ただ、「ロミオの災難」はホラー風だったので、あれで少しダメだった人は、こちらはホラーなので、ちょっと受け付けないかもしれません。でも、私もホラー苦手ですけど、本物のホラーって感じじゃないので、意外と結構サクサク読めたなー。グロテスクじゃないからかな?
その上、ありきたりな話ではなく、さまざまな変化を用いてきているので、読者は先を読むことよりも、今の心境を考えながら、ハラハラドキドキして読むことになるので、この描き方は他の分野でも、役に立ってきそうです。
特に、最初の「クックロビンの埋葬」は秀作です。この話だけで良かったと思うくらいに、出来が良かった。それにオチもきちんとしていて、読了感がありました。
コンビニの店員から、少しずつ常連客に興味を持っていって、その客と親しい仲になっていく過程は、普通に面白い恋愛小説としても成立していそうな話でした。まあ、そこから先が楽しみな展開で、この方でないと書けない面白さなんですよね。
逆に他の話は、居心地の悪い読了感だったので、それも、変化のつけ方としてはアリかなと思います。ちょっとつけたしって感じで、それほど魅力的ではなかったなぁ。3つ目の「子供たちの町」もなかなか読み応えがありましたよ。
オチはともかく、こういう書き方をする人って、最近少ないと思うので、なんか将来性に期待してしまうなぁ。今度は現実味のある恋愛ストーリーとか書いて欲しいかな。
X(クロス)トーク (電撃文庫) 来楽 零 by G-Tools |
コメント一覧 (2)
ヨークさんが僕のパワーを吸い取ったんじゃないかと思うほど僕の方は滞ってますが。
来楽先生のこれとロミオは持ちつつもまだ読んでないですねぇ……
しかしヨークさんの感想見ると、やはりこの人にしかない文章があるんだなぁと思えて期待度が高まるというものです。
ちょっと本編関係ない話になりますが、この人あまり売れてないけど、メディアワークス内ではかなり期待されてるんじゃないかなぁと思っていたりします。
イラストの緒方さんがかなり有名だからってだけですが。
なんか悔しくなってきたので今から何か読んできますノシ
頑張るよー。4月になったら燃え尽きていると思うけどw。
あれですよね。順調に読んでいたときはいいけど、一度停滞すると、なかなか次を読むタイミングがとれなかったりと、不思議なものです。
> やはりこの人にしかない文章があるんだなぁ
文章力はマジすごいです。これはぜひ小説家の卵である神酒原さんにも見て欲しいと思うくらいに、人をひきつける文章と言うのは、なかなか出会えないです。それだけでも読む価値があります。
> メディアワークス内ではかなり期待されてるんじゃないかなぁと思っていたりします。
なんか大賞のお留守バンシーと名作の狼と香辛料に力を入れすぎて、こちらはなんか方向性が定まっていないようで、暗中模索の時期なのかもしれません。杉井さんは勝手に色々やってくれているし。だから、なにかきっかけがあれば、一気にブレイクしそうなライターですね。
> なんか悔しくなってきたので今から何か読んできますノシ
読んで読んで。そして、感想聞かせて。