短編作品としては最高傑作


以前に出している短編「探偵綺譚」「PRESENT FOR ME」を超えたのでは、と思えるこの一作。「探偵綺譚」の場合は、「それ町」と比べると、無難な仕上がりで評価は低く、逆に「PRESENT FOR ME」は8編構成になっていて、人によっては、1,2話ほど、心に響く一冊になっている。

そんな短編作品だったので、期待せずに読んだのですが、これは、自分にとって、一番のツボでしたね。ギャグセンスは「それ町」を読んでいればわかるように、古いギャグと新しいギャグと織り交ぜており、シリアスな中でも、ギャグを入れて、読者を堅苦しくしないようにしている配慮も素晴らしい。

内容


大学の女子寮で、同室の先輩と後輩が織り成す日常を描く、ハートフルギャグコメディという位置づけ。「それ町」は高校生が主人公だけど、こちらは、大学生の2人が主人公となり、ギャグよりも、シリアス面で、色々学べることの多い若干大人向けの一冊となっております。

「駄サイクル」


一部少しネタバレになるかもしれないけど、この「駄サイクル」には、色々、論議をかもし出すかもしれない要素が含まれています。

アーティストの卵たちが、自分たちの絵や音楽などを持ち寄って、それを店の中に置く。そして、それを応援する仲間たちによって、支えられる。いわゆるクローズドサークル。内輪うちで、認め、認められ、それだけで満足する世界。そこから、特技や才能をのばしていくのを恐れ、絶対に賞賛を浴びる仲間たちの中で、その才能を披露する。それを「駄サイクル」。

でも、これも悪いことではない。だって、みんなが上を目指したら、確実に、誰かと比べ、比べられ、劣っている部分がクローズアップされ、何とか直そうと努力するかも知れない。でも、努力だけでは直らない部分もあるし、天才が現れて、その人と比べられようもんなら、自分の才能や特技で好きなことが、嫌いなことになってしまい、挫折してしまう。

つまりは、世の中の才能はトーナメント方式に近い。どんどん這い上がっていく天才や努力する秀才、そんな彼らと比べられ、負けるようであれば、上を目指すんではなく、絶対に誉められる井の中の蛙に、自らなろうという話。

世間の誰からも賞賛されることは、とても嬉しい。認められ、それでいて、自分の価値を高めていく、人は、最初そんな人生を目指したいのかもしれない。けど、人って、弱いものですから、ぬるま湯につかって、いたいんですよ。あまり自分をいじめたくないんですよ。

それが次の「目標の転換とリアルな日常のイメージ」へとつながります。

名言「何の目的もなく、ただ毎日生きてんのかよ!?」


小さい頃って、なりたいイメージとか、人生設計とか、夢みたいなことを口走って、それに向かってみようと一度は努力するじゃないですか。

でも、そんなことを目指しているうちに、世間の荒波に呑まれて、いつの間にか、自分の目標が転換されている。普通を目指し、普通に生き、普通に幸せになりたい。そんな日常のイメージが、いつもの生活から、人は学ぶというか、だんだん、それが良い様に思えてくるんですよね。

そんな生き方がいいのか、悪いのかには触れていませんが、なんか、ただなんとなく毎日生きているって、考えたら、悲しくなりますよね。だから、人には、目標がないと、妥協やただ生きるということだけにとどまってしまうので、常に、何か見つけておかなければならないなというお話。

この作品の続編を作ってほしいな


続編が難しい終わり方をしてしまったけど、「それ町」よりも何か、考えさせられる部分が多い、あと、成人男性、成人女性の会話の仕方とか、行動とか良く分析しているなと思わせます。私はこういった作品の方が好きだな。

できれば、どんな形でも良いので、続編を出してほしいなと思います。嵐山歩鳥よりも入巣柚実の天然のかわいさが、とても好きになりましたので。