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やっぱりひとひらは期待を裏切らない。


それぞれの想いを果たして、別れを待つ。この寂しさの前のスッキリ感というのは心地良い。まずはちとせの告白。玉砕覚悟の上だったけど、何もしないで一方通行の片思いだけで終わってしまうよりは断然良いと思えてしまうちとせの思い切りの良さが良く出ています。

それと、野乃の演劇部への謝罪。野乃たちも卒業してしまうし、演劇研究会もなくなってしまったわけだし、別に必要なかったのかもしれない。でも、麦たちのことを考えてか、しこりを後に残したくないということと、最後に和解して気持ちよく終わりにできればということだったんでしょうか。

それに答えて、演劇部の人たちも野乃たちを憎んでいなかったということや野乃の場所をとってしまったことに、いくらか罪悪感を覚えていたようです。お互いを理解しあう関係って良いですね。

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「美麗…私ね…一緒に舞台に立ちたかった」

先ほどの謝罪と並べて、今回の野乃はいくらか傷心気味です。卒業を控えると、野乃のような強い心を持っていても、弱くなってしまうのでしょうか。でも、本心を榊に伝えることができて良かった。張り合っていた榊ともますます仲良くなっていく気がします。

そして、ラブレター。軽いフェイントですね。甲斐へのものかと思わせておいて、恋愛路線で終わるのかと思いきや、野乃へのものだったんですね。甲斐とのその後は描かれていなかったので、このまま友達のような関係でいられるんじゃないでしょうか。

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野乃への手紙は榊が作った野乃への特別な衣装について。その場で、この衣装を着ることはなかったけど、麦と野乃との夢の中で抽象的に着ることになりました。この衣装は榊と野乃との夢ということで、野乃が一緒の舞台に立つことはなかったため、この二人の夢は叶わなかった。だから、着ることはできなかった。

けれど、麦と野乃との夢はまだ終わっていない。舞台に立って、ひとひらを演じる。その延長線上で人生の中でひとひらを再現するという麦の夢ができた。その中では今までの回想シーンを交えて、麦の成長した様子や二人の思い出など、幻想的な雰囲気の演出。

そして、麦の夢の中で、野乃はあの衣装を着ることになる。麦の夢は現在進行形なので、その中では野乃は何でもすることができるという抽象的な意味なのかな。それとも、野乃のおかげで麦も夢を持つことが出来たので、榊との夢に固執することなく、野乃も夢を持ってほしいという意味なのかも。

ただ、残念だったのは、この幻想的なシーンがあまりにも壮大なスケールで演出されたこと。麦が幻想的な空間を浮かんだり、バックに山や飛行機、外国の街の風景、嵐の波止場など、今までのひとひらとは違った演出方法で、少し世界観がずれてしまったように感じる。

これも世界の壮大なスケールに比べたら、麦の悩みなんて、ちっぽけなもんと言いたいのかも知れないので、意味はあったのかも。

「待っているわ。橋の向こうで…」

橋の向こう側が何を表しているかは語られなかったのですが、大学は高校とは橋を渡った所にあるのかな。

そして、卒業生4人を見送る麦の姿。近くに寄って見送るんでなく、校舎の屋上の上から大声で送り出すという所がなかなか憎い演出をします。麦の遠くまで響き渡る声の強さを生かして、これからも演劇で頑張っていけますということを表していたのかな。光の中に吸い込まれるように去っていく4人の姿がとても印象的でした。

と、卒業した理咲でしたが、進路が決まったのか、決まってないのか、気になるー!見送られるとき、笑顔だったので、決まったと信じよう、よし、そうしよう。

エピローグ、麦は2年に進級し、ちとせと共に演劇部に。甲斐は変わらず美術部に。最後は誰もいなくなった部室を映して、今までのセリフを交えて、きれいに終わらせました。部室のドアに自分たちの名前を彫ってあったのが、少しもの悲しさを残すエンディングになっていました。

<全体的な総括>

最初、学園ものの演劇って言うと、結構ありふれた設定だと思っていて、2番煎じ、3番煎じに近い状態になるのではと思っていたのですが、回を重ねるごとに他の作品とは違うなんらかの要素を含んでいると感じ、毎週見逃せない作品になりました。

それは麦のサクセスストーリーだけでなく、周りの人間との関係であったり、副主人公のような野乃の麦への絡ませ方とか絶妙さをとっても、最高な作品です。

評価:★★★★☆ [4.6]

原作がまだ続いていることもあり、麦の演劇部への入部で、また違った方向性を、もし良かったら第2期で描いてくれることを期待しています。