ひかりをすくう
ひかりをすくう
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橋本 紡
光文社
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世界観

[日常][精神病][田舎]

あらすじ

突然こころが壊れてしまった。そんな私を、哲ちゃんは静かにそっと抱きしめてくれた。私にとって、ありふれた日常が最良の薬になった…。この世界に降るもうひとつのひかり。ひとの可能性を描く切実な物語。

印象に残った言葉


「まともな人間でなくなったという宣告のように思えた」―――智子

短文感想(ネタバレなし)

仕事がストレスとなり、病気を発症してしまった智子の日常を描いた作品。たんたんと読んでしまうとなんの変化もない普通の小説ですが、一字一句細かく読んでいくと、細かい心情まで、うまく描写されていて興味深い。ひとつひとつの文章がとてもわかりやすいので、さらっと読める点も好印象。

精神的な病気がわかったときには、世界から切り離されてしまった感じた智子に、責める人、支える人がいて、普通の生活を送っている人にも考えさせられる一冊となっております。

短文感想(ネタバレあり)


不登校児の小澤さん、パニック障害の智子。この二人の会話だけでも、とても興味深い。教えている側と教えられる側、どちらにも少し問題があって、智子はすべての物事を真面目にとらえて積極的に行動するタイプ、小澤さんは真面目だけど、何かあると、逃げてしまうようなタイプ。

二人とも真面目なんだけど、真面目同士だと、お互いの気持ちがわかるけど、ぶつかってしまうこともある。そういう時の第三者、哲ちゃんの存在。二人の仲が悪くならないよう、精神的に支えている本当に出来た大人。

気持ちを読んで、適切な対処をする哲ちゃん。そして、物事に対しての見方をだんだんと変えて、自分に優しい生き方へと変えていく智子。前向きに壁を乗り越えていくようになってきた小澤さん。キャットタワーの5段目まで上り詰めたマメ。これからが始まりの絵本の中のピー。

内容を吟味しないで読むと、普通の小説に見えてしまう点だけが気になるだけで、とても、きれいな終わり方でした。