世界観
[美][雪国][青春][恋愛][日常][シリアス][鉄道模型]
あらすじ
わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった
鉄道を愛し、孤高に生きる七竈。淫乱な母は、すぐに新しい恋におちて旅に出る。親友の雪風との静かで完成された世界。だが可愛そうな大人たちの騒ぎはだんだんと七竈を巻き込んで。
印象に残った言葉
「キハはいいね、七竃」「うん、いいね。雪風」―――雪風&七竃
短文感想(ネタバレなし)
古風な表紙で、七竃や雪風の口調も古風。昭和の時代に書かれた小説を思い出すような世界観。美しく生まれたが故の苦悩や人と変わっている事をネックにしない七竃の美しい生き方というものがテーマになっているのかな。
章毎に語り手が変わるのも新しい手法。しまいには、犬まで語り手に(笑)。
短文感想(ネタバレあり)
心を通わせているのも雪風だけと、少し不憫に思える七竃。
でも、途中、緒方後輩(笑)が絡んできて、雪風と七竃の二人の美しいセカイに片思いという展開には結構心惹かれるものがあったなぁ。雪風が好きで、七竃に近づいて、いつのまにか、雪風が離れるよりも、七竃が離れていってしまうことに不安を感じてしまった、緒方みすず。
最後、緒方後輩に「このキハをお持ちなさい、後輩。そのぅ、あのぅ、はなむけ、です」と言う七竃。全てはっきりと丁寧口調で話す七竃なんですが、この友達関係になった緒方後輩に、最後、なんと言えばいいのかわからない、そんなしどろもどろな面も見られて、なにか可愛らしさを感じました。
緒方後輩の「青春の墓標にするわ」の返し言葉にも、少しうるっときました。
そして、雪風との別れのシーン。これも美しいですね。互いの名前をただ呼び合って別れる。今までは、それほど意味もなく呼び合っていたんですが、これは相手がそばにいると確信しての行為。最後は別れた互いの道を励まし合う名前の呼び合いに聞こえました。連絡先とか聞いて、東京に行っても話す関係でなく、また、会えたら会おうという人間通しの繋がりは美しすぎますって。
母が遊び歩いて帰ってこないような、ちょっと重たい内容なので、母に対しては、ちょっと理解しづらい部分がありました。